インドネシアなどの海外に夫が単身赴任した場合の年末調整や所得税の確定申告、配偶者控除、児童手当、健康保険や厚生年金などの手続きについて17項目にまとめて解説する。旦那(夫)が海外に単身赴任になったらどんな手続きがあり、何が変わるのかをすべてまとめた。実際に私がインドネシアに9年間以上単身赴任した時の経験も含めて解説するので非常に参考になると思う。
世帯主である夫が1年以上インドネシアなどの海外に単身赴任や駐在する時にはさまざまな手続きがある。日本に残された家族にとって不安なのは、年末調整や確定申告などの税金や健康保険などがどうなるかということだ。
子供がいる家庭では、夫が海外に単身赴任中には実質的に母子家庭となるし、肉体的負担も増える。旦那がいない寂しさもある。子供たちにとっても父親がいないので教育上の不安もある。病気がちな子供をお持ちのお母さんもいるだろう。また、家計を支えるためにパートで働いている人も多い。最近の国会では配偶者控除の限度額が103万円から150万円の引き上げが検討されたりもしている。
なお、夫がインドネシアなどの海外に単身赴任する時に読んでおいたほうがいい記事は以下だ。
→海外の単身赴任で浮気を防止する7つの方法
→【海外の単身赴任】インドネシア手当と生活費の相場
→インドネシア在住9年だから言える!赴任者と家族を守る7箇条
できるだけ解説を簡単にするために、役員でない従業員の夫が単身赴任し、妻と子供が日本に残る場合について解説する。会社の役員の場合には手続きや所得税が変わってくるので注意してほしい。
1.海外赴任するときの住民票
2.海外赴任時の児童手当は?
3.海外赴任先への在留届
4.夫が単身赴任中の印鑑証明や住民票
5.海外赴任中の運転免許証は?
6.海外に単身赴任するときは年末調整が必須!
7.海外単身赴任するときの保険料控除申告書は?
8.海外単身赴任するときの配偶者特別控除申告書は?
9.夫が海外単身赴任中の配偶者控除・配偶者特別控除
10.海外単身赴任で年末調整した後の賞与・給与
11.海外単身赴任中の健康保険は使えるの?
12.海外赴任中の海外旅行傷害保険は必須
13.海外単身赴任中の厚生年金と第3号被保険者は?
14.海外単身赴任中の住宅ローン減税はない!
15.海外単身赴任中の固定資産税の支払い方法
16.海外単身赴任中の源泉徴収
17.海外単身赴任中の確定申告
1.海外赴任するときの住民票

夫が1年以上海外へ単身赴任する場合、夫は海外への転居となり日本の住民票から抜けて、海外の住所になる。日本においては「非居住者」になるのでいろいろな手続きが変わってくる。
所得税法の用語で、「居住者」とは国内に住所または現在まで引き続き1年以上居所を有する個人の事だ。居住者以外の個人を「非居住者」という。一般的には国内に住民登録されていないときには「非居住者」になる。
日本で転出手続きは出国の2週間前から受け付けてくれる。市役所にパスポート、個人番号カード、住民基本カード、戸籍謄本を持っていけば手続きが可能だ。委任状があれば代理人でも手続きは可能になる。
同時に、夫が世帯主であれば妻が世帯主になるので「世帯主変更届」も同時にしておく。
海外へ転居するとき、海外の住所がはっきり決まっていない場合には、現地にいる同僚の住所や滞在するゲストハウスやホテルでもよい。ただし、インドネシアの移民局は住所によって管轄が異なり、かつ1週間以内に申請をするので、できるだけ早めに住所を決めておいたほうが良いだろう。
なお、出国後にすぐに必要な住民票や印鑑証明、戸籍謄本などは前もって取っておいたほうがよいだろう。
2.海外赴任時の児童手当は?
夫の名義で児童手当の支給を受けている場合には「消滅届」を提出し、新たに妻の名義で「認定請求書」を提出する必要がある。児童手当の認定には、妻名義の銀行通帳、所得課税証明書、または健康保険証などが必要になる。
ただし、認定から支給まで1ヶ月ほどかかる場合があるので、海外赴任決まったら早めに手続きをしたほうが良いだろう。詳細はお住まいの区役所や市役所に問い合わせてほしい。
3.海外赴任先への在留届
出国した夫は、パスポートと戸籍謄本を持参して現地の大使館または領事館に出向き、「在留届」を提出しなければならない。
インドネシアの在留届けの記入例は以下を参考にしてほしい。
→在留届け記入例:http://www.id.emb-japan.go.jp/zairyutodokesample.pdf
インドネシアの場合には「就労ビザ」をあらかじめ取得する必要があるので、以下の記事を参考にしてほしい。
→インドネシア就労ビサ取得方法まとめ
赴任が終了し帰国した時には、パスポートと戸籍謄本を持参して市役所の窓口に申請すれば住民に復帰できる。元の住所でもよいし他の地域の住所でもよい。
4.夫が単身赴任中の印鑑証明や住民票
不動産売買、自動車売買、遺産相続など、海外にいる夫の印鑑証明が必要になる時もある。夫の住民票がないため市役所での印鑑証明が取得できない。
印鑑証明に変わるものとして「署名証明(サイン証明)」がある。海外にいる本人が大使館に出向き、本人が署名したことを大使館の職員が確認し証明を貼り付けるタイプと、所定の書類に署名またはぼ印をしたことを証明するタイプの2種類がある。
どのタイプの印鑑証明が必要なのかは、印鑑証明を提出する方と協議してほしい。また住民票の代わりになる「在留証明」も同様に大使館で取得できる。
取得したら、郵便局に行き書留郵便で日本に送ればよい。インドネシアの場合には、カントルポス(Kantor Pos)に行き、国際書留郵便(EMS)で送れば、4~6日程度に日本に送ることができる。
私も一度だけ「署名証明」をしたことがある。以外と簡単で大使館職員の目の前でサインをするだけでよいし、時間も10分ほどで完了する。
詳細は在インドネシア大使館のサイトを確認してほしい。
→http://www.id.emb-japan.go.jp/visaj_02.html#署名証明
5.海外赴任中の運転免許証は?
[インドネシアの運転免許証]
ジュネーブ条約締約国で運転をする予定があれば、国際免許証を取得しておくと良い。
・ジュネーブ条約締約国リスト
→http://www.npa.go.jp/annai/license_renewal/join_geneve.pdf
インドネシアはジュネーブ条約に締約していないため、現地で運転免許証を取得することになる。インドネシア語での筆記試験と簡単な実技試験がある。しかし、自分で車やバイクを運転することは勧めない。事故が起きた時の対応ができないし、救急車を呼ぶにもお金が必要で、病院の救急体制も良くないからだ。
赴任したほとんどの日本人は運転はせず、現地の運転手を雇っている。
日本の運転免許証はそのまま更新まで持っていた方が良い。更新日の1年前から更新手続きができるので、一時帰国の時に更新すればよいだろう。私の場合は、更新時に住民票がないために警察に問い合わせたところ「連絡ができる日本国内に住んでいて住民票があればだれでもよい」ということだった。
詳細は最寄りの警察署に問い合わせてほしい。
6.海外に単身赴任するときは年末調整が必須!
夫が1年以上の予定で海外赴任のため非居住者になった日(出国日)までに「年末調整」が必要になる。
1月1日から12月31日までの1年間に、会社は毎月給与を支払うときに、所得税と復興特別所得税の「源泉徴収」をして所得税を払っている。年末調整とは、年末に1年間の源泉徴収を確定して、差額分を還付または徴収することだ。年末調整の対象者は、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しており、2,000万円を超えないことが条件になる。
年度の途中で海外に赴任して「非居住者」になった場合には、出国日の時点でその年の給与が完了するので、源泉徴収額が確定したことになる。例えば5月10日に出国した場合には、5月10日までの給与で源泉徴収額が確定され、年末ではないが「年末調整」の手続きをすることになる。
以下は出国までの年末調整に必要な手続きについて解説する。
給与所得者の扶養控除等申告書
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、その年度の最初の給与を受ける前に会社に提出している。記載内容に間違いがないかを会社に問い合わせて確認してほしい。控除対象配偶者や扶養親族がいない場合でも提出しているはずだ。
控除対象配偶者、扶養親族の範囲の確認
それぞれの対象者になるかは細かく決められているので内容を確認してほしい。特に注意してほしいのは以下になる。
①控除対象配偶者
所得者を生計を一にする配偶者で、年度中に「所得」の見積額が38万円以下の人になる。パートなどの給与だけの場合には、給与の「収入」が103万円以下になる。今後は150万円になる予定だが実施の時期ははっきりしていない。
所得の見積額が38万円〜76万円になる場合には「配偶者特別控除」になる。(詳細は次項に記載)
出国の日の現況で見積りされたその年度(1月1日〜12月31日)の所得要件をみたしているかを判断される。パートなどの給与だけの場合には、給与の見積収入金額が103万円以下になると所得要件を満たしており控除対象配偶者となることができる。
通常の会話では「収入」と「所得」は同じ意味で使われるが、両方とも所得税法での用語だ。分かりやすくするために、会社員やパート、アルバイトだけで会社からお金をもらっている給与所得者の場合について解説する。
「収入」とは、給与や賞与の年間の合計金額だ。具体的には源泉徴収票の支払金額に書かれている金額で、会社が社員に支払ったお金という意味になる。
「所得」とは、給与や賞与の年間合計金額(「収入」という)から、給与所得控除額を引いた金額になる。給与所得控除額は、源泉徴収票の支払金額が1,619,000円未満場合には650,000円になる。つまり以下の式になる。
所得=給与と賞与の年間合計金額(収入)ー 給与所得控除の金額
パートなどで収入が103万円だと税金がかからないというのは、以下の計算によるものだ。
1,030,000円(収入)ー650,000円(給与所得控除)=380,000円(所得)になる。
380,000円の所得ということになり、この所得金額が38万円以下が配偶者控除の対象者となる。よって妻のパートによる給料が103万円以下の収入であれば「控除対象配偶者」に記載できる。
さらに、この380,000円に課税されるのではない。課税所得は、この所得から無条件で控除される「基礎控除」がある。基礎控除の金額が38万円となっているので結果として、課税される所得=0円になるので税金がかからない。
つまり、
380,000円(所得)ー380,000円(基礎控除)=0円(課税所得)
ということだ。課税される所得が0円だから所得税がかからないということだ。
配偶者控除でよく言われる妻の収入の「103万円という壁」というは、妻が夫の給与だけで生活している(扶養している)という前提であり、妻自身としては所得税を納めていないということが必要なのだ。
計算をまとめると、
103万円(収入)ー65万円(給与所得控除)ー38万円(基礎控除)=0円(課税所得)
となる。
②特定扶養親族
19歳〜23歳未満は特定扶養親族になり控除額が増える。(2016年度では630,000円)
③老人扶養親族
70歳以上の親族で同居か同居でないかで控除額が異なる。
④障害者控除
障害者の程度と年齢、同居によって変わってくる。
7.海外単身赴任するときの保険料控除申告書は?

保険料控除申告書と配偶者特別控除申告書は1枚の用紙になっている。年末調整のときには「給与所得者の扶養控除等申告書」と同時に会社に提出する。
保険料は出国の日までに支払ったものに限る。外国の社会保険料と外国保険事業所が締結した生命保険のうち、国外で締結したものにかかるものは控除の対象にならないので注意してほしい。
保険料控除には以下のものがある。申請には支払ったという証明書類が必要になる。
・生命保険料
・地震保険料
・社会保険料
・小規模企業共済等掛金
なお、年末調整をしたからといって健康保険が使えなくなるのではない。健康保険、厚生年金については後述する。
8.海外単身赴任するときの配偶者特別控除申告書は?

配偶者特別控除を受けるには、夫の合計所得金額が1,000万円を超える場合には申告できない。
配偶者の所得が38万円〜76万円の場合に配偶者特別控除が受けることができる。給与所得だけの場合、その年度の収入合計が103万円〜141万円となる。
妻の収入が103万円未満の場合には、所得が38万円未満となり、配偶者控除を受けることができる。この場合には「給与所得者の扶養控除等申告書」の用紙に控除対象配偶者として記載すればよい。
配偶者特別控除の場合には、配偶者の合計所得金額(見積額)を記入し、早見表により控除額を決めることになる。
9.夫が海外単身赴任中の配偶者控除・配偶者特別控除
夫が海外に単身赴任して「非居住者」になり、夫の収入に対しては現地で所得税を払うことになる。日本に残された家族の生活費として、日本本社から給与が支払われても源泉徴収の対象にならない。
夫の収入が給与だけであれば源泉徴収の対象にならないので、夫の源泉徴収票も発行されないし、扶養控除申告書も、保険料控除申告書、配偶者特別控除申告書も必要ない。夫の所得税も払う必要がない。
つまり、夫が非居住者で給与だけの収入であれば、配偶者控除も配偶者特別控除もない。しかし、妻が働いた分の源泉徴収に対して所得税がかかる場合がある。
夫が役員や不動産収入などがある場合には、源泉徴収や確定申告をする必要がある。「所得税の納税管理人の届出書」を出国する前に提出して、納税管理人が確定申告や源泉徴収を非居住者に代わっておこなう必要がある。
租税条約を締結している国に赴任するときには、減税される場合があるので「租税条約に関する届出書」を提出しておいたほうが良い。
詳細は税務署に問い合わせてほしい。
・海外転勤中の不動産所得などの納税手続き
→https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1926.htm
10.海外単身赴任で年末調整した後の賞与・給与

出国後に会社から夫の給与として支払われた場合には、「国内源泉所得」に該当しないので、所得税と復興特別所得税はかからない。非居住者である夫は、インドネシアで全世界で稼いだ金額を合計して所得税を計算して徴収するので、日本では源泉徴収されない。
非居住者であっても、日本での不動産収入や家賃収入、役員報酬、国内で働いた期間の給与などがある場合には、源泉所得となり源泉徴収の対象になる。
つまり、夫が従業員で海外だけで仕事をしており日本での勤務がない場合には、夫の日本の給与振込口座にどれだけ振り込まれても所得税は支払う必要はない。会社にとっては海外の現地法人との取引で税法上の手続きが必要になる場合がある。
しかし以下などのように非居住者であっても「国内源泉所得」としてみなされる場合がある。
①役員の場合:国内源泉所得に該当し、20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%)の税率で源泉徴収される
②ボーナス:出国する日までの賞与が出国後に支払われた場合には、日本での勤務期間分は20.42%の税率で源泉徴収される。
③不動産所得など給与以外の所得がある場合には確定申告が必要になる。詳細は次項の「確定申告」を見てほしい。
なお、租税条約を締結している国に赴任するときには、減税される場合があるので、納税管理人を定めて、「租税条約に関する届出書」を提出しておいたほうが良いだろう。
赴任が終わり日本に帰ってきて「居住者」になった時、居住になった日以降に支払われた給与は、その年の年末調整の対象となる。帰国したら「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社に提出することは忘れないでほしい。
11.海外単身赴任中の健康保険は使えるの?

夫が海外赴任で「非居住者」になっても、今まで通りに健康保険を使うことができる。常時従業員が働いている法人では、「適用事業所」になり、適用事業所と使用関係(労務の提供、賃金等の支払いなど)があれば、被保険者として健康保険に加入する義務がある。
夫が単身赴任で海外に居住していても、適用事業所との使用関係があれば健康保険の被保険者になる。私の場合も、従来どうり健康保険を使うことができたので、一時帰国中に歯の治療をおこなった。
夫が健康保険の被保険者であれば、夫の収入によって生活している家族は「被扶養者」となり、健康保険の給付を受けることができる。
会社で天引きされる健康保険料は変更する場合があるので、現在加入している健康保険組合に問い合わせてほしい。
サラリーマンの健康保険組合には以下の種類がある。
①健康保険組合連合会
大手企業が独自に健康保険組合を設立しており、ほとんどが連合会に加入している。例として、IHIグループ健康保険組合、あいおいニッセイ同和健康保険組合、アクサ生命保険組合、朝日生命健康保険組合などがある。
②全国健康保険協会
中小企業で働く従業員とその家族が加入している。以前は政府管掌健康保険という名称だったが、平成20年に全国健康保険協会が設立され運営されている。通称「協会けんぽ」と呼ばれている。
③人材派遣健康保険組合
人材派遣社員のための健康保険組合で平成14年に設立された。
非居住者になった場合の詳細については、加入している健康保険組合に問い合わせてほしい。
12.海外赴任中の海外旅行傷害保険は必須!

単身赴任している夫が病気などで医療費がかかった場合には、一旦全額を支払い、その後加入してしている健康保険組合に請求できる。ただし、インドネシアも含め海外の医療費は高額になるので、多く場合「海外旅行傷害保険」に加入している。
旅行保険を扱っている保険会社には、駐在用の海外旅行傷害保険があるので加入しておいたほうが良いだろう。通常は会社が負担してくれる。海外旅行傷害保険があると、無料で医療機関で治療を受けることができる。代表的な保険会社は、東京海上日動、AIU保険、ジェイアイ傷害火災などがある。
私の場合も海外旅行傷害保険に加入しており、下痢などで現地の指定医療機関で薬や点滴などを受けたことがある。実際に無料で治療できた。ただし、歯の治療は含まれていないので日本に一時帰国中か、赴任前に直しておいたほうが良いだろう。海外に滞在中は必ず海外旅行保険証を持っていることで、事故などにあったときに持っているお金を気にすることなく治療を受けることができる。
会社でまとめて加入している場合があるので、会社の担当者または各保険会社に問い合わせてほしい。
13.海外単身赴任中の厚生年金と第3号被保険者は?
インドネシアに海外赴任で「非居住者」になった場合、任意で日本の社会保障制度に続けて加入することになる。通常は赴任前の会社(適用事業所)と使用関係が続いているので、そのまま厚生年金を加入し続けることが多い。
私も場合もそのまま加入していたので、年金支給額は日本で勤務していた期間も合わせて計算される。非居住者になっても、厚生年金には加入しておいたほうが良いだろう。
夫が厚生年金加入者であれば、夫に扶養されている配偶者も「第3号被保険者」にそのまま適応する。
日本との社会保障協定が締結している先進国に赴任する場合には、5年以内であれば日本の社会保障制度になり、5年以上であれば原則として赴任する国の社会保障制度になる。
社会保障制度を締結している国については以下を参照すること。
・日本年金機構ホームページ
→https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/yakuwari/20150518.html#cmssyakaihosyo
インドネシアの場合には、現地法人で働くすべての従業員に対して、健康保険と労務保障に加入しなければならない。外国人の場合には6ヶ月以上就労している場合には加入しなければならない。ただし、保障金額が低いのであまり日本人にとってはあまり意味がない。
詳細は以下を参考にしてほしい(インドネシア語)
・健康保険:BPJS Kesehatan;https://bpjs-kesehatan.go.id/bpjs/
・労務保障:BPJS Ketenagakerjaan;http://www.bpjsketenagakerjaan.go.id/
14.海外単身赴任中の住宅ローン減税はない!
夫の名義で住宅ローンを組んでおり、住宅ローン減税を受けている場合が多いと思う。住宅ローン減税の正式名称は「住宅借入金等特別控除又は特定増改築等住宅借入金等特別控除」という。
夫が海外へ単身赴任によって非居住者になると住宅ローン減税は適用されない。ただし特例がある。
・平成28年4月以降に住宅を取得した。
・海外単身赴任によって非居住者になった。
・取得した住宅に家族や親族が引き続いて住んでいる。
・納税管理人を定めている。
以上を全て満たしている場合、納税管理人が翌年の確定申告をする時に、住宅ローン減税を受けられる。
詳細は国税庁に問い合わせてほしい。
・転勤と住宅借入金等控除
→https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1234.htm
上記の特例が適用されない場合には、住宅ローン減税されないので日本で支払われた生活費から全額を住宅ローンとして返済する必要がある。会社によっては、住宅ローン減税分を負担してくれる場合もあるので、会社と相談してほしい。
15.海外単身赴任中の固定資産税の支払い方法

固定資産税は、個人でも法人であっても、1月1日に不動産の所有者に課税される。課税されるのは固定資産税と都市計画税がある。
夫が海外赴任で日本にいない場合には、代理で納税をおこなう「納税管理人」を決めて、不動産の所在地を所轄する税務署に「納税管理人届出書」を提出する。届出書が提出された場合には、固定資産税、都市計画税の納税通知は納税管理人に郵送される。
通常4回に分けて支払うか、初回に1年分を一括で支払うかを選択できる。
なお、「所得税・消費税の納税管理人」と、「納税管理人」は別々に、夫が出国する前に税務署に届け出る必要がある。
・所得税・消費税の納税管理人の届出書
→https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/h28/08.pdf
・納税管理人届出書
→http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/ts042.pdf
16.海外単身赴任中の源泉徴収
夫が海外に単赴任して、収入が給与だけの場合には所得税も確定申告も必要ない。
しかし、夫が会社の役員であったり、不動産賃料などの収入がある場合には「国内源泉所得」とみなされ源泉徴収の対象となる。
国内源泉所得とは、日本国内で獲得した所得のことで以下がある。
・恒久的施設帰属所得、国内にある資産の運用又は所有による生ずる所得、国内にある資産の譲渡により生ずる所得
・国内にある不動産の貸付けにより受け取る対価
・国内法人から受ける利益の配など
・給与、賞与、人的役務の提供に対する報酬のうち、国内において行う勤務、人的役務の提供に基因するもの
・国内にある営業所を通じて締結した保険契約等に基づく年金等
・その他国内源泉所得
詳細は国税庁ホームページの「国内源泉所得の範囲」を参照すること
→https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2878.htm
源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は、原則として徴収した月の翌月10日までに「非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書(納付書)」を添えて金融機関または所轄税務署の窓口で納付する。
源泉徴収された所得税率ほとんどが20.42%(所得税:20%+復興特別所得税:0.42%)になる。
なお、租税条約が締結されている場合には、免除または軽減を受けられる場合がある。支払日の前日までに「租税条約に関する届出書」を国内源泉所得の支払者に提出し、所轄税務署長に提出することなっている。
17.海外単身赴任中の確定申告
海外に単身赴任し非居住者となった夫の名義で、不動者所得や出国後給与以外の所得があった場合には、確定申告が必要になる。
確定申告前までに「所得税の納税管理人の届出書」を税務署に提出し、国内の「納税管理人」が代わって確定申告を行う必要がある。届出書を提出後は、税務署からの書類は納税管理人宛に送られる。
確定申告は、非居住者の納税地を所轄する税務署長に対しておこなう。
まとめ
夫が海外への単身赴任にするときの年末調整・確定申告・配偶者控除などの手続きについて、まとめて解説した。
夫が1年以上の予定で海外に単身赴任する場合には、住民票を現地に移すことになるので「非居住者」になる。非居住者になる出国する日までに、年末調整をしなければならない。また非居住者になることで世帯主が妻になり、所得税や確定申告などが変わっってくる。
気になる健康保険と厚生年金についてはそのまま継続することが多いので、会社の担当者と相談して欲しい。
海外に赴任中に不動産売買などには、印鑑証明が必要になるが「非居住者」には印鑑証明書が発行できない。そのため、大使館などで「署名証明(サイン証明)」を取得し、印鑑証明の代わりになることもご紹介した。
パートなどで働いている妻の収入については配偶者控除などの制度は適応されないので、妻だけの収入に対して所得税を払う場合がある。また、不動産収入がある場合には、「国内源泉所得」となり、国内に「納税管理人」を定めて納税をすることになる。
今回は、夫(旦那)がインドネシアなどの海外に単身赴任したときの、年末調整や確定申告、配偶者控除などの手続きについてまとめてお伝えした。これから海外赴任を予定されている方はぜひ参考にして欲しい。
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