インドネシアに渡航するには、渡航目的によって取得するビザが異なる。観光目的に限ってビザは必要ないが、ビジネス目的の場合には到着ビザ(VOA)を入国した空港のイミグレーションで購入しなければならない。その他、留学や研究、退職者なども目的によって事前にビザを取得する必要がある。
例えば、工場内の作業などの就労を目的とした場合は、どんなに短期間であっても、就労ビザ・タイプ312を取得しなければならない。
ついては前回の記事「インドネシア就労ビザの取得方法【保存版】(その1)」で、就労ビザ・タイプ312の取得方法を解説した。今回は就労ビザ・タイプ312を取得し、インドネシアに入国した後にやらなければいけない申請や登録について詳しく解説する。
おそらく、これほど詳しくインドネシアの就労ビザについて解説した記事は他にはないと思う。ビジネス目的でインドネシアに渡航する方は、ぜひ一度目を通してほしい。
もしもインドネシア入国後にこれらの申請や登録をしなければ、入国管理局の検査や警察による一時拘束・国外追放もあるので必ず実施してほしい。
[就労ビザ(312)取得手順]
就労ビザを取得後インドネシアに入国してから必要な申請や登録は以下の11項目である。(2番目の項目については、2014年以降に廃止になったので現在は10項目)
1.一時居住許可書:KITAS
2.外国人コントロールブック:Buku POA(2014年から廃止になった)
3.警察への外国人登録報告証:STM
4.州の一時住民登録証明:SKPPS
5.ジャカルタ特別自治州に住む場合の住民登録:KIP
6.居住地区の住民課の住民登録:SKTT
7.数次回出入国許可:MREP
8.個人所得税番号の取得:NPWP
9.外国人労働者雇用補償金(DKPTKA)の振込
10.外国人労働許可書(IMTA)取得
11.外国人着任報告:LKOA
[入国後の各種申請認可]
1. 一時居住許可書:KITAS (通称:キタス)
[一時居住許可書(KITAS)サンプル、出典:plus.google.com]
<注意事項>
近年、インドネシア警察と入国管理局による査察が強化されている。査察の場合には、パスポート原本と一時居住許可書(KITAS)の原本を提示が求められる。
以下の在インドネシア大使館のお知らせを読んでみてほしい。
・当地滞在におけるパスポート及び暫定居住許可証(KITAS)の携行について(2015年7月10日付)
(http://www.id.emb-japan.go.jp/oshirase15_14.html)
<申請先>
地方の入国管理事務所
<申請期限>
インドネシア入国後7日以内に申請する。
ジャカルタ周辺の入国管理事務所の住所
・南ジャカルタ(JAKARTA SELATN)
JL. WARUNG BUNCIT RAYA NO.207 RT/RW.001/001 KEL.DUREN TIGA, KEC.PANCORAN,
JAKARTA SELATAN, DKI JAKARTA, 12760
TEL:(021)79170912, 79170910
FAX:(021)-79170907,79170910
kanim_jaksel@imigrasi.go.id
http://www.imigrasi.go.id/index.php/hubungi-kami/kantor-imigrasi
・カラワン(KARAWANG)
Jl. Ahmad Yani No.18, Karawang 41312
TEL:(0267)-400725 – 727
FAX:(0267)-400726
HP.085770852111 (informasi & pengaduan)
kanim_karawang@imigrasi.go.id
kanim2karawang@gmail.com
http://karawang.imigrasi.go.id/
・ブカシ(BEKASI)
KOMPLEK GOR BEKASI JL. A. YANI NO. 2 KEL.KAYURINGIN JAYA, KEC.BEKASI BARAT, BEKASI, JAWA BARAT
TEL:(021)-88968018
FAX:(021)-88968018
HP.081380005977
kanimbekasi@gmail.com
http://imigrasibekasi.com
その他入国管理事務所の所在地は以下のサイトを参照してほしい。
→ http://www.imigrasi.go.id/index.php/hubungi-kami/kantor-imigrasi
<受け取る許可書>
・一時居住許可証:KITAS(通称:キタス)
・パスポートにはKITASの印が押され有効期限の日付が記入される。
[一時居住許可スタンプ]
<有効期限>
1年間有効
<申請の際の提出書類>
1. 申請フォーム
2. 保証人からの身分保証書
3. パスポート原本とパスポートのコピー
4. 州からの居住証明書
5. 大臣または関係する政府機関からの推薦書
6. 権限を持つ機関からの外国人労働者雇用計画書
7. 代理人が手続きを行う場合は、十分印紙を貼りつけた委任状
8. 会社設立書のコピー
9. 投資分野を管轄する国家機関(BKPM)からの投資承認書のコピー
10. 恒久事業許可のコピー
11. 商業許可書のコピー
12. 会社登録証のコピー
13. 会社の納税番号証(NPWP)のコピー
14. 代表者の一時居住許可書(KITAS)のコピー
<取得手順>
①入国管理事務所に申請書と書類を提出、手数料を支払う
↓
②入国管理事務所に行き、写真、指紋を取る
↓
③本人確認のため係官の前でサインをする
↓
④エージェントよりパスポートと一時居住許可書(KITAS)を受け取る
2.外国人コントロールブック:Buku POA(通称:ブク・ビル)
2014年2月より廃止となった。
[外国人コントロールブック、出典:americanindonesian.com]
3.警察への外国人登録報告証:STM
外国人登録報告証STM [出典:AJconsultant.net]
自己報告証明書が2014年1月1日より廃止され、現在は警察へは外国人登録報告書だけの提出となった。
[用語解説] 外国人登録報告証SMT: Surat Tanda Melapor、自己報告証明書SKLD:Surat Keterangan Lapor Diri<申請先>
各地の警察事務所
<受け取る許可書等>
外国人登録報告証(STM)
<申請期限>
一時居住許可証:KITAS(通称:キタス)発行から30日以内
<申請の際の提出書類>
1.登録申請書
2.パスポートの全ページコピー
3.申請代理人(インドネシア人)の住民登録証(KTP)
4.会社からの「保証する」という手紙(レター)
4.州の一時住民登録証明:SKPPS
<申請先>
住んでいる州の市役所または住民登録局
<受け取る許可書等>
住民登録証明書(SKPPS)
<申請期限>
国家警察本部に届出後14日以内
※または一時住居許可発行から30日以内が目安(規定はない)
<提出書類>
1.申請書
2.パスポートのコピー
3.一時居住許可書(KITAS: 通称 キタス)のコピー
4.就労許可としてのビザ推薦状(TA-01)のコピー
5.英文履歴書
6.家族の証明書(必要な場合)
7.パスポート証明用写真(2×3cm) 3枚
<有効期限>
一時居住許可書:KITAS (通称:キタス)に書かれている期限と同じ、または州により規定されている期間
[用語解説] 住民登録証明書SKPPS: Surat Keterangan Pendaftaran Penduduk Sementara5.ジャカルタ特別自治州に住む場合の住民登録:KIP
90日以上ジャカルタに滞在する17歳以上の外国人という条件がつく。
<申請先>
ジャカルタ特別自治州の住民登録局または町役場
<受け取る許可書等>
住民登録証明書(KIP)
<申請期限>
国家警察本部に届出後14日以内
<有効期限>
一時居住許可書:KITAS (通称:キタス)に書かれている期限と同じ
<提出書類>
1.申請書
2.パスポートのコピー
3.一時居住許可書KITAS (通称:キタス)のコピー
4.家族の証明書(必要な場合)
7.パスポート証明用写真(2×3cm) 2枚
<注意事項>
1.ジャカルタ特別自治州に滞在中は常に所持義務がある。
2.家族同伴の場合には、家族にも登録する必要がある。
3.通常KIPというのは、低所得者向けの奨学金支給の教育カード(Kartu Indonesia Pintar)のことを言う。
6.居住地区の住民課の住民登録:SKTT
<注意事項>
・ジャカルタ特別自治州に住む場合は、2014年からKIPがあればこれは不要になった。
・家族同伴の場合には、家族も登録する必要がある。
<申請期限>
国家警察本部に届出後14日以内
<申請先>
地域の住民登録局
<受け取る許可書等>
住民登録証明書(SKTT)
<有効期限>
一時居住許可書:KITAS (通称:キタス)に書かれている期限と同じ
<提出書類>
1.申請書
2.パスポートのコピー
3.一時居住許可書KITAS (通称:キタス)のコピー
4.家族の証明書(必要な場合)
5.パスポート証明用写真(2×3cm) 2枚
7.数次回出入国許可:MREP
[数次回出入国許可(MREP)]
就業している期間にインドネシアから複数回出入国をする場合には取得しておく必要がある。多くの赴任者は、日本本社での会議や日本に帰省する時のために取得している。
<申請先>
入国管理事務所
<提出書類>
1.申請
2.申請者の住民票(KTP)
3.パスポート(原本とコピー)
4.一時居住許可書:KITAS (通称:キタス)の原本とコピー
<受け取る許可書等>
パスポートに「MULTIPLE RE-ENTRY PERMIT」の印が押され、期限が書かれる。
<有効期限>
ビザ有効期限までの期間
[用語解説] 数次回出入国許可MREP : Multiple Re-Entry Permits
8.個人所得税番号の取得:NPWP
[納税者番号カード、出典:s1003.photobucket.com]
<有効期限>
返還時まで有効
<申請先>
地域の税務サービス事務所(Kantor Pelayanan Pajak)
<申請の際の提出書類>
1.申請書
2.一時居住許可書KITAS(通称:キタス)のコピー
3.パスポートのコピー
4.居住地域のからの居住証明書
5.関係省庁からの会社設立証明書のコピー
<受け取る許可書等>
所得税番号カード(NPWP)
[用語解説] 納税者番号NPWP: Nomor Pokok Wajib Pajak
9.外国人労働者雇用補償金(DKPTKA)の振込
<注意事項>
外国人労働許可書の申請時に必要なので、振込証明書を必ず保管しておくこと
<振り込み先>
労働移住省外国人労働者雇用補償金口座
ネガラ・インドネシア銀行:Bank Negara Indonesia (BNI)
テベット支店(Cabang Tebet)
口座番号(Nomor Rekening):11773003
※バンク・ネガラ・インドネシアへはオンラインでも振り込み可能
<申請の際の提出書類>
1.申請書:申請書は銀行で販売している
2.法務人権大臣が承認済みの会社設立証書
3.会社事業許可書
4.有効な会社所在証明書
5.納税者番号(NPWP)
6.有効な会社登録証
7.会社組織構成
8.労働報告義務に関する法律1981年第7号に基づく有効な労働報告義務証明書(Wijib Lapor ketenagakerjaan)
9.指導されるインドネシア労働者の任命書
<受け取る許可書等>
外国人労働者雇用補償金(DKPTKA)の支払い証明書
<料金>
100USドル(毎月)
[初回は1200USドル(年)を振り込むのが一般的]
就労が完了し帰国する場合には、返還することは可能
[用語解説] 外国人労働者雇用補償金DKPTKA : Dana Kompensasi Penggunaan Tenaga Kerja Asing
10.外国人労働許可書(IMTA)取得
[出典:ajconsultants.net]
<注意事項>
外国人労働者雇用補償金の支払い証明書を用意しておく
※査察の際には以下の内容をチェックされるので、記入慎重にすること。
a.労働省に提出済みにRPTKA(外国人雇用計画書)の組織図と実際の組織図が完全に一致しているか
b.外国人労働許可書(IMTA)の肩書きと名刺の肩書きの完全に一致しているか
c.外国人労働許可書(IMTA)にない複数の職務の兼務がないか(役員の兼務は可能)
d.外国人労働者の人事関係書類の署名(社長でも不可)
<申請先>
投資調整庁、または労働移住省の外国人労働者管理室
※以下のウェブサイトからオンラインで申請・承認することもできる。
→ http://tka-online.naker.go.id/
<受け取る許可書等>
外国人労働許可書(IMTA)
<申請の際の提出書類>
a.オンラインでの手続きの場合
1.雇用育成総局長宛の新規IMTA申請書
内容;会社名、住所、TKAデータ、役職名、TKAの利用機関、人数、国籍、業務場所、会社のレターヘッドにタイプ、代表者サイン、会社印)
2.就労許可としてのビザ推薦状(TA-01)
3.一時滞在ビザ発給を認める通知書(VTT)のコピー
4. 外国人雇用計画書(RPTKA)承認の決定書
5.指導を受けるインドネシア人の住民登録証(TKA)の保険証のコピー(英語まははインドネシア語)
6.パスポートのコピー
7.外国人労働者雇用補償金(DKPTKA)の支払い証明書
8.雇用契約原本
9.関連機関からの推薦状(必要があれば)
10.背景が赤のカラー写真(4×6cm) 2枚
11.法人格を有する第三者が書類の手続きを行う場合、会社からの任命書あるいは6,000ルピアの印紙を貼り付けた委任状。委任日と住民登録証(TKA)のコピーも添付する
12.保険証書(インドネシア語):従来は日本で発行された海外旅行保険証書でもよかったが、「インドネシア保険会社からの保険証書」が必要となった。現地の日系保険会社でも可能。
13.国家社会保障(BPJS健康・労働保険)の加入:新規申請時には不要だが、延長の場合には加入する必要がある。
・BPJS健康保険:http://bpjs-kesehatan.go.id/bpjs/index.php
・BPJS労働保険:http://www.bpjsketenagakerjaan.go.id/
b.オフラインの手続き方法
1.申請書
2.関係省庁からの会社設立証
3.関係する省庁から承認された法務局からの証明
4.同じ州からの会社場所の証明
5.会社組織構成図
6.指導されるインドネシア労働者の任命書
7.労働報告義務書(Wijib Lapor ketenagakerjaan)のコピー
8.外国人労働者として役職につく政府機関からの推薦書(必要であれば)
9.保険証書(英語またはインドネシア語)
以下は外国人労働許可書(IMTA)申請書記入例
11.外国人着任報告:LKOA
<申請先>
会社が所在する州の労働局
<受け取る許可書等>
外国人労働者着任報告の証明書
<提出書類>
1.着任報告書
2.外国人雇用計画書(RPTKA)承認の決定書のコピー
3.外国人労働許可書(IMTA)のコピー
4.パスポートのコピー
5.一時居住許可書(KITAS)のコピー
6.外国人登録報告証(STM)
7.外国人コントロールブック:Buku POA(通称:ブク・ビル)のコピー
8.住民登録証明書(SKPPS)
9.会社設立証明書
10:背景赤のカラー写真(4×6cm)
インドネシアより帰任の時に行う申請については、以下を参照
→ インドネシア就労ビザ取得方法まとめ
インドネシアの就労ビザの取得方法については、以下を参照
→ インドネシア就労ビザの取得方法(その1)
関連用語については以下を参照
インドネシア就労ビザ取得に関する関連用語解説
まとめ
前回の「インドネシア就労ビザの取得方法(その1)」に引き続き、就労ビザ・タイプ312を取得した後に、インドネシア国内にてやらなければいけない申請や手続きについて解説した。
以下の10項目を順を追って手続きしなければいけない。
1.一時居住許可書:KITAS
2.外国人コントロールブック:Buku POA(2014年から廃止になった)
3.警察への外国人登録報告証:STM
4.州の一時住民登録証明:SKPPS
5.ジャカルタ特別自治州に住む場合の住民登録:KIP
6.居住地区の住民課の住民登録:SKTT
7.数次回出入国許可:MREP
8.個人所得税番号の取得:NPWP
9.外国人労働者雇用補償金(DKPTKA)の振込
10.外国人労働許可書(IMTA)取得
11.外国人着任報告:LKOA
これらの申請や手続きを怠るとインドネシア警察などから厳しい処分を受けることになるので、たとえどこかのエージェントに頼んだとしても一応は目を通しておいてほしい項目だ。
細かい部分については、情報更新が追いついていない。できる限り最新情報をアップしておいたので、もし個別に問い合わせがある場合にはメールをいただきたい。
以上、「インドネシア就労ビザの取得方法(その2)」として就労ビザを取得してからやるべきインドネシア国内での申請や手続きを解説した。