インドネシアにおいて工場内に立ち入り、作業や技術指導をする場合には就労ビザが必須である。この就労ビザはタイプ312というもので、インドネシア現地での報酬の有無や滞在期間に関係なく、インドネシア国内で働くことができる唯一の就労ビザだ。

就労ビザ・タイプ312(以下、「就労ビザ(312)」)を取得していなければ、たとえ緊急の場合でも工場内に立ち入っての作業はできない。

近年、ジャカルタ州内ばかりでなくその近郊の工場においても、地元警察と入国管理局による就労ビザのチェックが厳しくなっている。就労の判断基準は、実際に作業をしているかどうかというものではなく、例えば工場内で作業服を着ているだけでも「就労」とみなされる。就労ビザを持っていなければこの時点でアウトだ。

さらに、インドネシア警察などの査察の際には外国人雇用計画書の組織図と、実際の組織図、外国人労働許可書の肩書き、組織図にない職務兼務などが同時にチェックされるので注意してほしい。

必ず就労ビザ(312)を取得し、その後はパスポート原本と一時居住許可書(KITAS)の原本の提示ができるように常に携帯することが大事だ。

インドネシアのジョコウィ大統領としては、国内景気の低迷により海外からの投資を増やすように促しているのだが、外国人労働者のビザ発給については逆に厳しくなっている。これはインドネシアの国内情勢の不透明感を増す原因のひとつだ。

インドネシア渡航のビザの種類

インドネシアに渡航する場合のビザは、目的と滞在日数によって大きく5種類に分かれている。観光ビザ、到着ビザ、1回のみ渡航できるシングルビザ、ビジネスビザ(212)、就労ビザ(312)を含む一時居住ビザの5種類だ。

[インドネシア・ビザ種類]
ビザ種類
それぞれのビザについての目的・滞在可能日数などは以下のとおりだ。

[インドネシア・ビザ種類表]
ビザ種類1

※インドネシア現地で就労ができるのはタイプ312の就労ビザだけだ。ビジネスビザのタイプ212では就労はできない。

注意事項
観光目的の30日以内の滞在はビザが不要になった(2015年7月より)。詳細は在インドネシア大使館のサイトを参照のこと。
→ http://www.id.emb-japan.go.jp/oshirase15_13.html

就労ビザ(312)取得し、就労を続け、いよいよ帰任する際には帰国前に再度申請が必要だ。以下の図のような流れになる。

[就労ビザ取得から帰国まで]
就労ビザ取得から帰国

1.就労ビザ(312)取得の手順

就労ビザ・タイプ312取得の手順は以下の「1.外国人従業員雇用計画書を労働移住省に提出」→「2.労働移住省による推薦状(TA-01)の発行申請」→「3.一時滞在ビザ(ビザ発給許可通知書:VTT)の申請」→「4.就労ビザ(312)の取得」という順番になる。

[就労ビザ(312)取得手順]
就労ビザ(312)取得手順

よく取り違えてしまうのは、「一時滞在ビザ」と「就労ビザ(312)」である。両方ともインドネシア語の法規では同じ「Visa Tinggal Terbatas」という表記になっている。しかし両者は別のものである。

ポイントは、発行元がインドネシア入国管理局か、在日インドネシア大使館かという違いだ。

「一時滞在ビザ」はインドネシアへ渡航するためのビザではなく、「ビザ発給の申請を許可する」というインドネシア入国管理局からの1枚の許可通知書が発行される。

一方、「就労ビザ・タイプ312」は、在日インドネシア大使館において申請者のパスポートにシールが貼られ、「INDEX VISA:312」と印刷がされている。

記事中においては「一時滞在ビザ」と「就労ビザ(312)」というふうに区別して表現しているが、他のサイトや書籍でされている表現とは異なる場合があるので注意してほしい。

インドネシア政府の基本的な考え方として(多くの諸外国がこの考えだ)、外国人従業員を雇用する目的は、「インドネシア人従業員に、インドネシア国内で働きながら教育・指導すること」だ。

インドネシア人の教育・指導のためには、現地法人に外国人雇用計画(RPTKA)があり、外国人従業員が十分な学歴や技能があるかどうかを確かめ、指導を受けるインドネシア人が決まっていることが必要条件になる。さらには「労働移住省からの推薦」も必要だ。

この要件を満たしていれば入国管理局は「外国人をインドネシア国内に入国し、滞在・就労してもいいだろう」というビザ発給許可を発行する。そして、在日インドネシア大使館は本人確認をして、パスポートに「就労ビザ(312)」の許可シールを貼付する。

以下に具体的に「就労ビザ(312)」取得作業の手順にそって説明をしよう。

1.外国人従業員雇用計画書を労働移住省に提出

現地法人は、「組織図と外国人の雇用計画を提示し、このようにインドネシア労働者に教えていく予定である」という内容の外国人従業員雇用計画書(RPTKA)を労働移住省に提出し承認書を得る。

2015年より投資調整庁のワンドアサービスが行われる予定行われている。

2.労働移住省による推薦状(TA-01)の発行申請

現地法人は、「外国人従業員雇用計画書に基づき赴任予定者と指導を受けるインドネシア労働者を決めたので、入国管理局に推薦してほしい」と労働移住省に申請をする。

労働移住省は、内容を確認し、就労のためのビザ申請推薦状(TA-01)を発行する。

2015年より投資調整庁のワンドアサービスが行われる予定だが、まだ確立されていない行われている。

3.一時滞在ビザ(ビザ発給許可通知書:VTT)の申請

現地法人は、「労働移住省から推薦された赴任者の一時滞在ビザ(ビザ発給許可書:VTT)の許可」を入国管理局に申請する。

入国管理局は、書類を審査し、一時滞在ビザ(ビザ発給許可書)を発行する。以下は一時滞在ビザ(ビザ発給許可書:VTT)のサンプルである。

[一時滞在ビザ発給許可通知書(VTT)]
一時滞在ビザ(VTT)

4.就労ビザ(312)の取得

赴任予定者が、一時滞在ビザ(ビザ発給許可通知書:VTT)・パスポート・その他書類を添付し、在日インドネシア大使館に就労ビザ(312)を申請する。

以下はパスポートに貼られた就労ビザ(312)のサンプルである。

[就労ビザ(312)]
就労ビザ(312)

就労ビザを取得後、90日以内にインドネシアに入国しなければいけない。

2.インドネシア入国後の申請・認可・報告

インドネシア入国後に必要な申請・認可・報告は以下のとおりである。「1.一時居住許可書:KITAS (通称:キタス)」→「3.警察への外国人登録報告証(STM)」→「4.州の一時住民登録証明書(SKPPS)」→「5.ジャカルタ特別自治州に住む場合、住民登録カード(KIP)」→「6.居住地区の住民課の住民登録証明書(SKTT)」→「7. 数次回出入国許可 (MERP)」→「8. 個人所得番号取得(NPWP)」→「9. 外国人従業員雇用補償金(DKPTKA)の振込」→「10.外国人労働許可書(IMTA)取得」→「11.外国人着任報告」という順番だ。
(※「2.外国人コントロールブック」については、2014年に廃止になった)

[入国後各種申請・認可]
入国後各種認可

1.一時居住許可書:KITAS (通称:キタス)

・注意事項
近年警察と入国管理局による検査が強化されている。パスポート原本と一時居住許可書(KITAS)の原本を提示することが求められる。

2015年6月18日付けでジャパンジャカルタクラブ(JJC)には、入国管理総局・捜査取締局長から、一時居住許可書(KITAS)の原本があれば良いと報告がある。しかし、末端の警察官について徹底されていない場合があり、パスポートの原本と一時居住許可書(KITAS)の原本の両方を持つ必要があるだろう。コピーしかない場合には裏金を要求される場合がある。

詳しくは、以下在インドネシア大使館のお知らせを参照されたし。
・当地滞在におけるパスポート及び暫定居住許可証(KITAS)の携行について(2015年7月10日付)
→ http://www.id.emb-japan.go.jp/oshirase15_14.html)

・申請先
地方の入国管理事務所

・申請期限
入国後7日以内に申請
一時居住許可書(KITAS)
[一時居住許可書(KITAS)]

2.外国人コントロールブック

・Buku POA(通称:ブク・ビル) ※2014年2月より廃止となった。

3.警察への外国人登録報告証(STM)

・申請先:警察事務所

4.州の一時住民登録証明書(SKPPS)

・申請先:住んでいる州の市役所または住民登録局

5.ジャカルタ特別自治州に住む場合、住民登録カード(KIP)

・申請先:ジャカルタ特別自治州の住民登録局または町役場

6.居住地区の住民課の住民登録証明書(SKTT)

・申請先:地域の住民登録局

7. 数次回出入国許可 (MERP)

・申請先:入国管理事務所

8. 個人所得番号取得(NPWP)

・申請先:地域の税務局

9. 外国人従業員雇用補償金(DKPTKA)の振込

・振り込み先:ネガラ・インドネシア銀行(BNI) テベット支店

10.外国人労働許可書(IMTA)取得

・申請先:投資調整庁または労働移住省の外国人労働者管理室または労働力配置総局

[aside type=”warning”]査察の際には以下の内容をチェックされるので、記入慎重にすること。
①労働省に提出済みに外国人雇用計画書(RPTKA)の組織図と実際の組織図が完全に一致しているか
②外国人労働許可書(IMTA)の肩書きと名刺の肩書きは完全に一致しているか
③外国人労働許可書(IMTA)にない複数の職務の兼務がないか(役員の兼務は可能)
④外国人労働者の人事関係書類の署名(社長でも不可)[/aside]

11.外国人着任報告

・申請先:会社が位置する州の労働局

3.就労ビザ(312)の帰任時の返還

駐在期間が終了し、日本に帰任(帰国)する場合の手続きには以下となる。「1.出国限定許可:Exit Permit Only(EPO)の申請」→「2.外国人労働許可書(IMTA)の返却」→「3.警察登録証(SMT)の返却」→「4.個人所得番号(NPWP)カードの返却」→「5.州の一時住民登録証明(SKPPS)の返却」→「6.地域住民票証明書(KIP/SKTT)の返却」という順番だ。

[帰任(帰国)時の手順]
帰任時の手順

1.出国限定許可:Exit Permit Only(EPO)の申請

・申請先:入国管理事務所

帰任する場合にはこの許可が必要で、承認を受けたら14日以内にインドネシアから出国しなければならない。

【2016年3月現在の最新情報】
就労ビザ(312)での滞在許可が1~3ヶ月の場合に限り、一時居住許可書(KITAS)と出国限定許可(EPO)の手続きが不要になった。再度就労ビザを申請することができる。
4ヶ月以上インドネシア滞在の場合には、必ず返納しないと新たに就労ビザを申請できなくなるので注意が必要だ。

※なお、この後の手続きのために必ず両面をコピーし取っておくことをおススメする。

2.外国人労働許可書(IMTA)の返却

・申請先:労働移住省の外国人労働者管理室または労働力配置総局

3.警察登録証(SMT)の返却

・提出先:警察事務所

4.個人所得番号(NPWP)カードの返却

・提出先:地域の税務局

5.州の一時住民登録証明(SKPPS)の返却

・提出先:住んでいる州の市役所または住民登録局

6.地域住民票証明書(KIP/SKTT)の返却

・提出先:地域の住民登録局

用語のインドネシア語表記

参考として文中に使用している用語のインドネシア語表記と省略形を書いておいた。翻訳者やインドネシアの担当者との話合いの際に使えると思うのでチェックしておこう。

・一時滞在ビザ(ビザ発給許可書:VTT): Visa Tinggal Terbatas
・外国人従業員雇用計画書 : RPTKA:Rencana Penggunaan Tenaga Kerja Asing
・労働移住省 : Departemen Tenaga Kerja dan Transmigrasi
・投資調整庁 : BKPM:Badan Koordinasi Penanaman Modal
・入国管理局 :Imigrasi

・外国人労働者 : TKA:Tenaga Kerja Asing
・インドネシア人労働者(TKI) : Tenaga Kerja Indonesia
・労働許可としてのビザ推薦状(TA-01):Rekomendasi Visa untuk Maksud Bekerja(TA-01)

・一時居住許可書:KITAS (通称:キタス) : Kartu Izin Tinggal Terbatas
・外国人登録報告証(STM) : Surat Tanda Melapor Orang Asing
・州の一時住民登録証明書 : SKPPS:Surat Keterangan Pendaftaran Penduduk Sementara
・ジャカルタの住民登録証 : KIP :Kartu Identitas Pendatang Warga Negara Asing
・地域の住民登録証明(SKTT) : Surat Keterangan Tempat Tinggal

・数次回出入国許可(MERP) : Multiple Re-Entry Permit(英語);Izin masuk kembali(インドネシア語)
・個人所得税番号 : Nomor Pokok Wajib Pajak (NPWP)
・外国人労働者雇用補償金 : Dana Kompensasi Penggunaan Tenaga Kerja Asing (DKPTKA)
・外国人労働許可書 :Izin Mempekerjakan Tenaga Kerja Asing (IMTA)
・外国人従業員着任報告 : Laporan Keberadaan Tenaga Kerja Asing

まとめ

インドネシアで働くための唯一のビザは「就労ビザ(312)」だ。就労ビザ(312)の取得は非常に複雑で、時間がかかり準備すべき書類も多岐に渡る。最近では手続きを簡略化するため投資調整庁が「ワンドアサービス」をするとしているが、実行するまでにはもう少し時間がかかるだろう。を始めている。

就労ビザ・タイプ312取得の手順については、
1.外国人従業員雇用計画書を労働移住省に提出
2.労働移住省による推薦状(TA-01)の発行申請
3.一時滞在ビザ(ビザ発給許可通知書:VTT)の申請
4.就労ビザ(312)の取得」
という順番になる。

就労ビザ(312)を取得し、インドネシア入国後にしなければいけない申請・認可・報告は、
1.一時居住許可書(KITAS) (通称:キタス)
3.警察への外国人登録報告証(STM)
4.州の一時住民登録証明書(SKPPS)
5.ジャカルタ特別自治州に住む場合、住民登録カード(KIP)
6.居住地区の住民課の住民登録証明書(SKTT)
7. 数次回出入国許可 (MERP)
8. 個人所得番号取得(NPWP)
9. 外国人従業員雇用補償金(DKPTKA)の振込
10.外国人労働許可書(IMTA)取得
11.外国人着任報告
という順番だ。(※「2.外国人コントロールブック」については、2014年に廃止になった)

そして、駐在期間が終了し、日本に帰任(帰国)する場合の手続きは以下の順序だ。
1.出国限定許可:Exit Permit Only(EPO)の申請
2.外国人労働許可書(IMTA)の返却
3.警察登録証(SMT)の返却
4.個人所得番号(NPWP)カードの返却
5.州の一時住民登録証明(SKPPS)の返却
6.地域住民票証明書(KIP/SKTT)の返却

就労ビザ(312)の手続きについて登場する用語解説も併せて書いておいたので何かの役に立つと思う。

最後にそれぞれの手続きについて、さらに詳しく解説をした。以下にて確認してほしい。
→ 「インドネシア就労ビザの取得方法【保存版】(その1)」
→ 「インドネシア就労ビザの取得方法【保存版】(その2)」

就労ビザに関する用語(日本語/インドネシア語)については以下を参照。
→ 「就労ビザに関する用語解説まとめ」

詳細についての情報更新が追いついていない部分もあるので、個別に問い合わせがある場合にはメールをいただければ、できるかぎり回答するつもりだ。

以上、「インドネシア就労ビザ取得方法まとめ」と題して、就労ビザ(312)についての大まかな手続きの流れを解説した。