日本を飛び出し、海外で飲食店を出店開業し、うまく成功を収めた経営者にインタビューした第4弾をお届けする。成功するためのノウハウを聞き出した。
ラーメン38のほか居酒屋やレストランなど27店舗の飲食店をここインドネシア運営している竹谷大世氏だが、彼は、豚骨ラーメンを初めてインドネシアに定着させたフロンティアでもある。
今回はインタビューの最終回として、竹谷氏が海外で飲食店を成功させるまでの苦難の道のりやインドネシアでの本業以外の取り組みをご紹介する。そんな中に海外での飲食店成功へのヒントやノウハウも隠れている。
1.屈しない強い精神力
2.2,000万円騙し取られる
3.現地に恩返し
1.屈しない強い精神力
[出典:竹谷大世氏]
海外での飲食店の運営するにはどんなことにも屈しない精神力が必要になる。竹谷氏の実際の経験を聞いてみた。
Q:近年ライバル店が増えたと思いますが影響は?
竹谷:僕はいいことだと思います。日本食の底上げという意味では。ここから公平な戦いになりますね。ただ、進出のニュースがあるのですが、撤退の情報はほとんど日本には届いていないみたいですね。
撤退したり、乗っ取られたりなどが結構あります。問題が起きて最終的に僕のところに「騙されました。どうしたらいいでしょうか?」と相談する方も多いですね。
「もっと早く言ってくれればなんとかできたのに・・・」と思うことはたくさんありますね。最初は「打倒!竹谷」という感じで出店してきているので、最初から相談はしませんよね。
Q:騙された経験は?
竹谷:山盛りあります。(笑)
Q:どんな状況でしたか?
竹谷:勝手に飲食店を開けられました。ラーメン38の最初のフランチャイズで契約した時ですね。共同経営者になってもらったインドネシア人とウチの会社と同額出資してやるという契約を結びました。儲けるのも損をするのも同額出資しているから平等で分けるというwin-winの約束ですね。
結局全部失敗しました。経理を見てくれた会社に売上を過少申告されて、利益を取られて、従業員を引き抜かれて、さらに勝手に別の店を開けられました。
経理は契約した会社の下(1階)にあって、パートナーのおばさんから「ウチの経理にやらせておくから」と言っていたのですが、半年経ってそろそろ利益を分配しようと言ったら、「全然お金なんかないわよ」と言われました。
僕が「無いわけがないだろう。少なくとも300万円ぐらい溜まっているはずだ」と言っても、無いものはないと言い張られました。これはダメだと思って、「もうあなたとはやってられません」と言ったら、店のものを全部取られて、別の店を開けられました。
Q:フランチャイズで他に失敗したことは?
竹谷:ラーメン38のフランチャイズでは、僕の知らないところでパートナーが勝手に「俺がラーメン38のオーナーだ」と触れ回って、出資者を集めてしまったのです。さらに、バリ島とビンタロに「もう建物を借りたからオープンしよう」と言ってきました。
僕が「あなたはフランチャズオーナーであって、ラーメン38のオーナーではない。勝手にラーメン屋は開けられない」と言ったら、怒ってピストル出してきて、「いいからやれ!」というわけです。
「撃ちたければ撃てよ。撃ったって俺はラーメン作らないよ。もう2度とお前とは組まない!」と言いました。結局撃たれはしなかったのですが、勝手に店を開かれてしまった。
メニューはスキャンコピーされて、同じユニフォームを着た従業員がいるニセのラーメン38が3店舗開いてしまった。
それでインドネシア法務省の知的財産権総局に「ウチの商標だから」と掛け合いました。勝手にラーメン屋を開いた彼は、インドネシアの政治家の知り合いを通じて、知的財産局のトップにコネを持っていたみたいでした。危なかったのですが、間一髪間に合いました。商標を上書きされそうになりましたね。
危うく商標を塗り替えらて、商標まで取られるところでした。
メチャメチャですよね。インドネシアはこんなことがどうにでもなる国だったんですね。それが通ったら法律もなにもないので、僕が負けたらインドネシアに絶望するところでした。
インドネシア知的財産権総局(Direktorat Jenderal Hak Kekayaan Intelektual Kementerian Hukum Dan Hak Asasi Manusia R.I=DJHKI)は法務省の下部組織で、特許、実用新案、商標及び産業意匠について認可しており、情報公開をしている。商標などを調べる場合には以下のサイトから検索してほしい。
http://dgip.go.id/
海外での飲食店出店開業には思いもよらない問題が多発する。法治国家であるはずのインドネシア共和国だが、ある人は「放置国家」だと表現している。ざまざまな法規や規定があるが、作っただけで放置されており、政府も、取締まる警察も、裁判所も最後はお金やコネなどで動いている。
私たち外国人は、常に「騙されない」ために周到な準備と、騙された時の損失を最小限にするように対処するしかない。だれも頼れないことは覚悟しておいてほしいし、対応できる強い精神力が必要だ。
2. 2,000万円騙し取られる

海外での飲食店開業は、ハイリスクな投資と実感させられるエピソードだ。いつも「騙されるかもしれない」と細心の注意をはらわなければならない。竹谷氏が実際に、2,000万円を騙し取られた経験についてお聞きした。
Q:一番損失が大きかったことは何ですか?
竹谷:一番騙された時は、2,000万円ですね。
3人で集まってPMA(外国資本投資企業)として起業した時ですね。出資するからにはイニシアチブを取りたいと思って、僕が40%持っていることになっていました。残り2人が30%ずつ持っているのですが、彼らは兄弟でミーティングにはいつも一人しか来ない。委任状持って来ているので、向こうは60%あるわけですよ。
それで、起業するための話し合いで、僕の意見が一切通らないミーティングだったんです。起業の途中までいって、結局2,000万円を騙し取られました。登記申請すらしていない状態でしたね。日本語のできる中華系インドネシア人には注意した方がいいですよ。(笑)
Q:一回、無一文になったと聞いているのですが、本当ですか?
竹谷:そうですね。出店して、撤退する時に僕の私財を全部没収されました。
総合日本食フードコートのようなものをやったときですね。一つの場所で7店舗のテナントを開店させました。7店舗とも全部僕が指揮してやりました。オーナーであって、かつテナントオーナーでもあるわけです。
テナントからの家賃収入で、マネージメントの給料を払うことになっていました。でも、そのフードコートがお客が入らなくて、ガラガラで、売上がないのに家賃と光熱費だけはガッチリ取られて、約束の給料は1円ももらえずにいました。
半年だけ僕は我慢したのですが、半年経って「全店閉めます」と言ったら、「家賃未払いとしてあなたの私財を没収します」ということになって、一文無しになって、放り出された感じですね。
こんなことが続いていたので、もう大抵のことでは驚かなくなりました。
竹谷氏でさえも成功の連続というわけではない。実際に現場で、失敗を繰り返し、はい上がってきた経験がある。竹谷氏から感じられる包容力は、たくさんの実際の経験によって築き上げられたものだ。原動力としては、内側から出てくる「人のためになる仕事」という意識が強いと感じられた。
3.現地に恩返し
竹谷氏はレストラン経営にとどまらず、様々な事業をしている。さらにボランティアとしても活動の場を広げている。竹谷氏が主催したジャカルタでの「縁日祭」は、7年目を迎えジャカルタ州知事も巻き込むような一大イベントに発展している。なぜ縁日祭というイベントをやろうと考えたのかをインタビューした。
Q:縁日祭を開催した目的は?
佐竹:最初は完全に意地ですね。レストランをやっているときに、何かもっとイベント的なものをやりたいなと思っていて、やはり「祭り」がいいだろうと思い、「リトル東京ブロックM縁日祭」と題してお祭りをやりました。
2009年にジャカルタのブロックM地域(日本レストランやバー集まった地域)で始まった文化交流のお祭りイベント。日本式屋台が立ち並び、御神輿やコスプレショーなどがある。現地人も加わり2015年の参加者は2日間で、25万人を超える一大イベントなっている。
https://sites.google.com/site/ennichisai/home
始めた時は知り合いからは、「やめとけば」とか「できる訳ない」とか「バカじゃない?」とか言われて、もう意地だけですね。現地のレストラン業界の重鎮に相談したら、「やってみなよ。手伝うから」と言ってくれたのですが、結局やってみたら手伝ってくれなかった。
1年目で辞めようと思ったのですが、思った以上に反響が大きくて、2年目、3年目と協力してくれる人が増えてきました。3年目までは僕はただの意地だけでやっていたのですが、「いったい何のためにやっているのだろう」と自問自答しました。
自分の中の答えとしては、「我々外国人がインドネシアという異国の地でビジネスをさせてもらっている。だから縁日祭は、1年に1回インドネシアに恩返しできるチャンスなんだ。日本の祭りの楽しさ伝えて恩返しをしよう」と確信したのが、3年目でした。
Q:コスプレで世界一になったと聞いていますが?
竹谷:なりましたね。コスプレのコミュニティーがあって、妻に紹介したらハマってしまいました。そこで、ジャカルタの縁日祭でインドネシア大会をやることになりましたね。すると、日本のワールドコスプレサミットから「世界大会に出ませんか」と声が掛かって、出場することになりました。
インドネシアは5回出場して、3位が2回あって、優勝1回ありましたね。すごい勝率ですよね。
Q:何が良かったと思いますか?
竹谷:インドネシア人はショーをする能力が高いのですね。アーティスティックな才能を持っている人が多いですね。
Q:今日は長い時間ありがとうございました。
竹谷:こちらこそ、ありがとうございました。
竹谷氏には人を惹きつける力がある。相手が持っている世界観を理解し、欲しているものを瞬時に判断し、目の前に出してくれる。成功するにはいろいろな経験とどんなことにも屈しない精神力が必要だが、人間力といった才能も必要になるのだろう。
なお、インドネシアの世界観を理解するには、インドネシア人世界観の光と影その1とインドネシア人世界観の光と影その2を読んで理解しておいてほしい。
まとめ
海外で飲食店を開業して実際に成功するノウハウについてご紹介した。インドネシアでラーメン店を広め、現地に定着させた竹谷大世(たけや だいせい)氏に、開店までの経緯や考えられないような体験など、非常に貴重なお話しを聞かせていただいた。
竹谷氏は2003年よりラーメン店を出店し、現在はダイセイグループとして8つの会社を経営するまでに成長している。
ダイセイグループ:http://www.daiseigroup.info/
その間には、騙されたり、不条理な金品を要求されたり、まさにイバラの道を歩いてきたフロンティアーだ。インタビューを通じて感じたことは、一つの軸を持っており、ある時は大胆に、またある時は繊細な気心の両方を使い分けていることだ。
さらに、縁日祭などを開催し、人を引き寄せるパワーを持っている。竹谷氏の経験はインドネシアだけでなくアジア諸国においても非常に参考になるだろう。
飲食店を海外で開業して成功する方法をシリーズでお伝えしてきた。今回が最終回となる。以前のインタビューは以下から。
インタビュー1はここから。
インタビュー2はここから。
インタビュー3はここから。
今回は、海外で飲食店を開業して実際に成功するノウハウと題して、インドネシアで成功をしている竹谷大世氏にお話しをお聞きした。これから海外で飲食店を開こうと考えている方は、竹谷氏の経験は非常に参考になるだろう。
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