インドネシアの渡航にはビザを取得する必要があるのだが、商談などのビジネス、就労、留学、研究、退職者など、渡航目的や渡航者の立場に応じてビザの取得の種類が分かれている。それぞれに適合したビザを取得してからインドネシアには渡航しなければならない。
就労ビザ・タイプ312は、インドネシア国内での就労を目的としたビザであり、たとえ短期間であってもインドネシア国内で働くときにはこの「タイプ312」というビザの取得が必要になる。
「タイプ312」のビザを取得しなければ、たとえば工場内などに入って作業をすることは許されない。
近年、インドネシア入国管理局やインドネシア警察が取り締まりを強化し、日本人も拘束されたり、国外退去処分を受けたりするケースも報告されているので十分注意してほしい。2015年には16,000人以上の外国人がインドネシアからの国外追放を受けている。その内日本人が何人含まれているかは不明。
なお、インドネシアでは2016年5月からジャカルタ地域に外国人監視チームを組織して、24時間体制で違法就労等の報告を受け付けている。会社事業所だけでなく、カラオケ店やホテル、アパートメントなどについても監視をしており、取り締まりを強化しているので、インドネシア国の法規に沿ったビザ取得が欠かせない。
細かい一例だが、2015年10月23日施行の労働大臣令第35号では、インドネシア現地法人との会議出席等については外国人雇用許可書は不要となった。しかし、これはあくまでも「会議」についてなので、工場内の会議室を使って会議するのはではなく、できるかぎり公共の会議室(工業団地内の事務所等)などでの会議をセッティングした方が良い。
【就労ビザ取得の手順】就労ビザ・タイプ312の取得についての大きな流れは以下の図のようになる。
「1.外国人雇用計画書の申請(PRTKA)」 → 「2.労働省による推薦状(TA-01)の発行申請」 → 「3.ビザ発給許可通知書(VTT)の申請」 → 「4.就労ビザ(312)の申請」という順番になる。
1.外国人雇用計画書の申請(PRTKA)
[外国人雇用計画書承認(RPTKA)]
外国人雇用計画書(RPTKA)は、インドネシア国内の法人が外国人を雇用する際には必ず提出して承認を得る必要がある。重要なのは、外国人雇用計画書に記載されている役職と実際に雇用する外国人の肩書きが一致することだ。一致していない場合には、違反となって裏金を要求をされることがあるので注意してほしい。兼務の場合にも外国人雇用計画書に記載するべきである。
<申請先>
投資調整庁(BKPM)
この投資調整庁が外国人雇用計画書申請の窓口となり、申請書を労働省(Kemennaker)の外国人労働者雇用管理局へ送付し承認される。
<受け取る書類>
外国人雇用計画書(RPTKA)承認の決定書
外国人労働者雇用管理局長が申請書を確認し、上部組織である労働省の雇用育成総局長が申請した外国人雇用計画について承認したという決定書のこと。
<有効期限>
最長5年
有効期限内であれば、一つの外国人雇用計画書で複数の外国人の雇用が可能となる。ただし、実質的に同様の役職であっても、組織図や名刺も含む肩書きが完全に一致していないと違反となる。
<提出書類>
a.外国人労働者雇用管理局長宛の外国人雇用計画書(RPTKA)の申請書(会社のレターヘッドを使用、タイプ、代表者サイン)及び会社代表の一時居住許可書のコピー
b.外国人雇用計画書の申請用紙(タイプ、代表者サイン)[申請書の記入サンプルあり]
c.投資調整庁(BKPM)からの恒久事業許可書のコピー
d.法務人権大臣(Kemenkumham RI)の承認済みの会社設立証書のコピー
e.村役場(賃貸の場合は建物管理者)からの会社所在証明書(有効期限3ヶ月以上)のコピー
f.国税局(Direktorat Jenderal Pajak)発行の納税者番号カード(NPWP)のコピーと登録証明書のコピー
g.州(県・市)局からの有効な会社登録証
h.会社組織構成
i.労働報告義務書(Wijib Lapor ketenagakerjaan)のコピー(有効期間3ヶ月)
j.会社業務計画
k.外国人労働者がインドネシア人労働者に職業訓練をおこなう旨の表明書及び教育訓練プログラム
l.指導を受けるインドネシア人労働者の指名書(会社代表サイン)及び住民登録証(KTP)のコピー、履歴書、卒業証明書
m.指導を受けるインドネシア人労働者の申請用紙
インドネシア人の雇用義務は1:10の比率であったが、労働大臣令第35号では廃止となっている。
n.手続きを業者に委託する場合の委任状( 収入印紙6,000ルピア)
o.関連機関からの推薦状(必要な場合)
[外国人雇用計画申請書]
以下のウェブサイトから申請フォームを入手できる。
・インドネシア共和国労働省、外国人労働者雇用サービス
Pelayanan Penggunaan Tenaga Kerja Asing Kementerian Ketenagakerjaan Republik Indonesia
http://tka-online.naker.go.id/default.asp
2.労働省による推薦状(TA-01)の発行申請
就労のためのビザを発行する推薦状の発行を労働省に申請する。入国予定の外国人雇用労働者としてふさわしい人なのか、インドネシア人の誰に教育・指導をするのかを記入し推薦状を発行してもうらう。
赴任する外国人の要件は以下となる。
b. 外国人労働者が就く予定の役職にに応じた、能力認証によって証明される能力あるいは5年以上の職歴を有していること
c. 指導するインドネシア人労働者に対して、専門性を移転する旨の表明書を作成する用意があること
d.
(外国人労働者雇用について労働移住大臣規定2013年第12号第5条)
労働移住大臣規定2015年16号により「インドネシア語でのコミニュケーションが可能」は削除された。
外国人労働者の申請については「学歴」と「職歴」の両方が必要である。「学歴」が大学、短大、専門学校、高等学校なのかは、実際にははっきりしていない。最近では、職歴が5年以上あっても高卒では許可されない場合や、6ヶ月しか就労・滞在しか許可が下りない場合がある。技術系の場合には技能証明書(インドネシア語訳)の提出しなければならない。
また、上記の条件を満たしていても、役員以外の25歳未満や60歳以上の就労ビザは取得が困難になっている。
卒業証明書は、最終学歴である卒業校に申請する。使用目的は「インドネシアの就労ビザ取得のため」で、英文卒業証明書の発行を依頼する。通常は数百円程度で発行してもらえる。卒業した学校のホームページを調べてみることをおススメする。
[英文卒業証明書例]
インドネシア語の習得は医療・金融機関では義務化されている。が、6ヶ月以上の外国人就労者に対して、一定のインドネシア語の習得が義務付けられる予定だ。
2015年労働大臣令でインドネシア語の習得義務は削除された。しかし、中部ジャワ州では2015年10月23日付け州知事条例により役員以外にインドネシア語試験を実施したという情報もある。ジョコウィ大統領は2015年10月に大統領令により、中央政府方針に反する条例廃止を発表しているが、大臣令と州知事条例が食い違っている典型だ。
<申請先>
投資調整庁(BKPM)
<受け取る許可書>
就労許可としてのビザ推薦状(TA-01)
就労許可としてのビザ推薦状(TA-01)[出典:ajconsultant.net]
<有効期限>
2ヶ月
ビザ推薦状(TA-01)は、発行後2ヶ月しかないので、受領後は速やかに次のステップに進む手はずを整えておこう。レバラン(長期休暇)などがある場合には、さらに手続きが遅くなる可能性がある。
<提出書類>
a.オンラインの手続きの場合
1.外国人労働者雇用管理局長宛の労働ビザ推薦状の発行をお願いする手紙(会社のレターヘッドを使用、タイプ、代表者サイン)
2.就労ビザの推薦状申請書式(タイプ、代表者サイン、会社印、収入印紙)
3.有効な外国人従業員雇用計画書(RPTKA)
4.登録から18ヶ月有効な旅券
5.コミサリスと取締役の推薦状申請の場合、会社設立証書と法務人権省(Kemenkumham RI)からの会社承認書
6.指導を受けるインドネシア人労働者任命書(代表者サイン、会社印)及び教育を受けるインドネシア人の住民登録証(KTP)
7.背景が赤のカラー写真 4×6cm
8.下記の役職に応じた卒業証明書あるいは能力認証状のコピー、公認翻訳者が英語かインドネシア語に翻訳し、アップロード
b.専門職:卒業証明書と職歴
c.取締役、コミサリス及び特殊な専門性や技能を必要とする特定の役職は除く
9.インドネシア語機関による能力試験を通じたインドネシア語能力認証状、取締役、コミサリス、及び特殊な専門性や技能を必要とする特定の役職は除く
10.外国人雇用予定者の履歴書をアップロード
11.関連機関からの特定の役職の外国人労働者の能力推薦状
12.法人格を有する第三者が書類の手続きを行う場合、会社からの任命書あるいは6,000ルピアの印紙を貼り付けた委任状、任命日と住民登録証(KTP)のコピーを添付
13.付添人インドネシア人労働者に専門性を技能を移転する用意がある旨の表明書
b.従来の手続き
1. 就労ビザの推薦状申請書式(タイプ、代表者サイン、会社印、収入印紙)
2. 外国人雇用計画書(RPTKA)承認の決定書のコピー
3. パスポートのカラーコピー
4. 本人署名の英文履歴書(印紙、サイン、社印)
5. 最終学歴の英文の卒業証明書と業務経験を証明する書面(印紙、サイン、社印)
7. 指導を受けるインドネシア人労働者の任命書のコピー
8. カラー証明写真、4×6 センチを 1 枚
9. 会社代表者が直接申請手続きを行わない場合の委任状(収入印紙6,000ルピア)
以下は、就労許可としてのビザ推薦状(TA-01)申請書の解説画像。
[就労許可としてのビザ推薦状(TA-01)申請書]
以下は英文の履歴書サンプル
[英文履歴書サンプル]
3.ビザ発給許可書(VTT)の申請
就労許可としてのビザ推薦状(TA-01)とその他書類と併せて、入国管理局に赴任者の一時滞在ビザという「ビザ発給許可通知書」(VTT)を申請する。
一時滞在ビザ(ビザ発給許可通知書:VTT)は、パスポートに捺印されるものではなく、入国管理局は「一時滞在ビザの申請に関して同意した」という1枚の紙を通知書として発行する。FAXまたはTelexで在日インドネシア共和国大使館に転送される。
現地法人は、一時滞在ビザ(ビザ発給許可通知書:VTT)をインドネシア入国管理職に受け取りに行き、国際郵便で日本にいる赴任予定者に送る。
<申請先>
入国管理事務所:入国管理総局(Direktorat Jenderal Imigrasi)の下部組織で、居住地域の入国管理事務をおこなう。
<受け取る許可書>
・一時滞在ビザ発給を認める通知書(VTT)
一時滞在ビザ(ビザ発給許可通知書:VTT)だけで渡航はできない。在日インドネシア大使館で就労ビザの申請をし、認可が必要。
[一時滞在ビザ発給許可通知書(VTT)]
<有効期限>
2ヶ月(通知書に書かれた期間)
ビザ推薦状(TA-01)は、発行後2ヶ月しかないので、受領後は速やかに次のステップに進むことをおすすめする。レバランなどの長期休暇がある場合にはさらに手続きが遅くなる可能性がある。
<提出書類>
1.申請書
2.パスポートの全ページコピー
3.証明写真 4X6サイズ 1枚
4.英文履歴書(印紙、署名、受入企業印が必要)
5.最終学歴の英文卒業証明書(印紙、受入企業印が必要)
6.保険加入証明書 のコピー(海外旅行保険や日本の健康保険証)
インドネシア保険会社からの保険証書が必要(現地の日系保険会社でも可)
なお、就労ビザ延長の場合には国家社会保障(BPJS健康・労働保険)が必要。新規の申請については不要。
7.派遣する日本の会社と派遣先であるインドネシア現地法人の英文雇用契約書
8.インドネシア現地法人と駐在予定者との英文雇用契約書
4.就労ビザ(312)の申請
赴任予定者は、一時滞在ビザ(ビザ発給許可通知書)が到着したら、下記の申請書類とともに在日インドネシア大使館に就労ビザを取得するために出向く。書類がすべて正確でそろっていたとしても、4日間通わなければならない。
1日目:申請書を取りに行き、タイプで記入する
2日目:申請書を提出する
3日目:必要な手数料などの支払いをする
4日目:パスポート等を取りに行く
通常の会社に勤務して仕事をしている赴任予定者は、時間的に余裕はなく無理だと言っていい。ビザ取得のエージェントに依頼する方が得策だ。代表的なインドネシアのビザ取得エージェントは[1. 就労ビザの流れ]を参照してほしい。
<申請先>
在日インドネシア共和国大使館
・在東京インドネシア共和国大使館
〒141-0022 東京都品川区東五反田5丁目2-9
TEL:03-3441-4201
公式ウェブサイト:http://kbritokyo.jp
・在大阪インドネシア共和国領事館
〒542-0081 大阪市中央区南船場4丁目4-21 りそな銀行船場ビル6F
TEL : 06-6252-9827
公式ウェブサイト:http://www.indonesia-osaka.org/ja
所轄地域:近畿、中国、四国のみ
<受け取る許可書等>
就労ビザ(タイプ312):パスポートに就労ビザタイプ(INDEX VISA 312)シールの貼られる。
[就労ビザ(タイプ312)]
<必要条件>
90日以内に入国すること
入国後30日間有効で、期間内に入国管理事務所に申請必要。
<就労ビザ有効期間>
就労ビザに期間には以下がある。有効期間によってビザ取得料金が異なる。
a. 2年
b.1年
c.6ヶ月
d.90日
e.30日
<提出書類>
1. ビザ申請書(サンプルあり)
2. パスポート(原本):ビザ申請時残存有効期間が18ヶ月以上連続した査証欄空白ページが3ページ以上
3. パスポートのコピー:データ面(顔写真が載っているページ)(A4)
4. 英文履歴書
5. 証明写真 :カラー3x4cm (3ヶ月以内に撮影)1枚
6. 英文推薦状:日本本社からの推薦状で渡航目的の詳細を記入する(社判・社印・職名印・ 会社のレターヘッドのある用紙を使用)
7. 英文招聘状(しょうへいじょう):現地法人の代表者からレター。宛先は日本本社に。申請者名、入国目的、滞在日数を記載(会社のレターヘッドを使用、タイプ、代表者サイン)
8. 往復航空券コピー(e-チケット可):チケット番号が入っているもの復路オープン可
9. 一時滞在ビザ(ビザ発給許可通知書: VTT )
・申請書見本は在日インドネシア大使館(東京)サイトより入手可能
http://kbritokyo.jp/visa/
・経歴書見本は在日インドネシア大使館(東京)サイトより入手可能
http://kbritokyo.jp/visa/
<ビザ取得料金>
¥5,650(6ヶ月以内)
¥10,750(12ヶ月以内)
¥18,410(24ヶ月以内)
<取得日数>
申請日の翌々日(土・日両国祝日は含まない)
まとめ
以上で就労ビザ・タイプ312を手にして、インドネシアに渡航が可能になる。次の記事「インドネシア就労ビザの取得方法【保存版】(その2)」では、インドネシア渡航後の申請や認可についてお伝えする。
なお、関連法規と用語のインドネシア語表記については以下の記事を参考にしてほしい。
→ インドネシア就労ビザ取得に関する関連用語解説
”細かい部分については、情報更新が追いついていない部分もあるが、できる限り最新情報をアップしておいたので、もし個別に問い合わせがある場合にはメールをいただきたい。” |