海外進出のブームは大企業から中小企業に移ってきている。特に東南アジアではそうだ。赴任する社員にとって気がかりなのはやはり給与と家族のことだ。中小企業では家族を日本に残して単身赴任する割合が多い。

私の9年という単身赴任の経験から、インドネシア赴任の給料の相場、手当や待遇について詳しくお伝えする。赴任する予定の方や家族、送り出す会社側にも参考にしてほしい。

給与相場比較に関して2回に分けてお伝えする。

・給与比較相場(その1)
1. インドネシア給与相場はプラス50~100万円
2. 手取りは変わらずに物価はどんどん上がる
3.インドネシアでの待遇一覧

給与比較相場(その2)
4.単身赴任と家族帯同のメリット・デメリット
5.個人所得税は30%で手取り額が減る
6.本社採用と現地採用の差は大きい

 

1. インドネシア給与相場はプラス50~100万円

手当相場は

1.相場は現年収にプラス50~100万円

日本採用で、機械系メーカの工場に単身赴任の場合は、現在の年収にプラス50~100万円の手取りが相場だ。

40歳前後の場合の手取り年収は、約500~600万円と予想される。
工場長や現地法人社長の場合は、1,000万円前後が多い。

上記の相場は平均的な予想にすぎない。会社の業種や規模や従業員数、業績、勤続年数、スキルの違いによっても差があることは承知していると思う。私が調べた結果では、最低は年収200万円から、最高は2000万円を超えるのもあり、かなりの幅があるので悲観しないでほしい。

噂などで聞く「海外赴任すると、給与は1.5倍に」や「赴任して帰ると家が買える」「現地では富豪のような生活になる」というのは幻想だ。ただ、日本勤務よりは手取り金額は多くなる場合が多い。家族や収入、昇進のことを考えて、海外に行きたがらない社員が多いからだ。

2.税務局により日本人給与のガイドラインが決められている

インドネシアでは外国人の給与のガイドラインが決められている。外国人から個人所得税をしっかり取ろうとする思惑からだ。給与の申告額が正確でないか、証明できない場合にはこのガイドラインによって個人所得税を計算する場合がある。現実的に、このガイドラインに拘束力はないので、金額を下回る場合にはしっかりと証明できればよい。このガイドラインは国籍、業種、地域によって別れている。

業種別にマネージャークラスの年収が高い順番に並べると以下になる。これは手取りではなく現地法人の給与とインドネシア以外の国の所得を合計した金額、その従業員が得る世界総所得金額を示している。
[月ごとの給与、単位USドル]

・鉱業・非石油採掘:20,552
・銀行・保険:14,854
・サービス業:13,958
・貿易:12,689
・運輸・不動産・リース業:11,268
・建設業・オフィスサービス業:8,387
・繊維以外の工業:9,092
・林業:6,403
・漁業:6,210
・農業:5,378
・繊維工業:5,506
[日本人給与水準ガイドラインより抜粋:インドネシアの会計・税務・法務 税務経理協会発行:新日本有限責任監査法人著]

3.給与はまず「手取り額」から決められる

中小企業の現地法人の場合は、最初に「手取り額」から決められる。

日本の場合は会社が支払う基本給や残業などの支払い給与総額があり、社会保険や税金などが控除され手取りとなる。海外勤務の場合は、日本と同じ計算をすると税率の違いにより「手取り額」が少なくなってしまうからだ。

まず「手取り額」を決めて、現地の所得税や社会保険料などを逆算して、支払い給与総額を決めていく方式を採用している会社が多い。支払い給与総額から各種の手当を当てはめていくという方式だ。

なお、所得控除については本人の基礎控除はRp24,300,000(年)となっている。
・所得控除に関する財務大臣令2015年第122/PMK.010/2015号
Pratuan Menteri Keuangan Republik Indonesia Nomor 12/PMK.010/2015 Tentang Penyesuaian Besarnya Penghasilan Tidak Kena Pajak

4.海外給与を決める3つの方式

一般的に日本採用で、海外駐在の給料は以下3つパターンで計算される。

A. 購買力保証方式
B. 別建方式
C. 併用方式

A.購買力保証方式

家族帯同を基本として、日本にいる時と同等の生活レベルを維持するために必要なコストとして計算される。「同等の生活」は、現地の生計費指数を乗じて計算される。生計費指数は商社や人事コンサルタントから提供される数値に基づいている。購買力保証方式は、大企業で複数の国において、世界的規模でビジネスをする商社などが採用している方式だ。

B. 別建て方式

日本とは全く違う海外専用の給与体系により計算されるものだ。赴任した国に合わせて作成される。現在では採用している会社は少数だ。

C. 併用方式

日本の給与体系はそのままで、駐在先のコスト分を手当などを上乗せする方式。単身赴任が多い中小企業を中心にこの方式を採用している会社が多い。日本に残しててきた家族の生活を守り、赴任者が現地での生活をできるようにするためだ。もう一つの利点は、帰任した時には手当分をカットするのだけなので、赴任者も会社側もお互いに理解しやすい。また、日本の厚生年金や雇用保険、健康保険の社会保証制度も維持できる。私がインドネシアに赴任した時もこの方式だった。

5.インドネシアの一般的な手当

一般的な給与・手当として以下のものが挙げられる

・海外基本給
本人または家族の生活費にあてる給与。別建て方式の場合が多い。

・海外勤務手当
海外勤務にともなう業務や金銭的不利益に報いる手当

・帯同家族手当
海外勤務に帯同する家族の労苦や生活費の補填

・子女教育手当
子女が通う日本人学校・インターナショナルスクールの授業料の補填

・ハードシップ手当
危険手当とも呼ばれ、生活環境が悪い地域や紛争地域に赴任する者への慰労を目的

・海外住宅手当
現地の住宅費の補助

・単身赴任手当
単身赴任する場合の二重生計によるコスト増への補填

・語学手当
現地での語学習得にかかる実費相当額を補助

・海外役職手当
現地での役職や割増賃金を考慮した給与

・海外通勤手当
現地での通勤にかかる実費相当額または自動車費を補助

それぞれ会社によって、扱う手当の種類も金額も違っているので、手当だけの比較はしないでほしい。繰り返しになるが、「手取り額」が赴任者の最終的な収入になるのだ。

2. 手取りは変わらずに物価はどんどん上がる

物価は上がる

日本で給料は横ばいか下がる傾向になっているにもかかわらず、インドネシアの消費者物価は実質7%以上も上昇している。すると給与体系が日本に合わせているため、赴任期間が長くなると実質的に現地での生活が苦しくなってしまうのだ。

赴任者が個人的に、物価があがったと感じるのは、以下ようなものだ。

・住宅やアパート代
・食費
・ガソリン
・ゴルフのプレー代

住宅の支払いについては、会社名義で借りている場合が多いが、更新などの際には家賃の値上げを要求してくる。
食費についても毎年のように値段が上がっており、生活を圧迫してくる。

日本人がよく利用するジャカルタ郊外のゴルフプレー費は2011年から2015年の間に約70%もアップしている。

・ジャカルタ近郊のゴルフ場料金
以下の表を参照してほしい。もはや、ゴルフのプレー代は日本でプレーするのとほぼ同じレベルにあるということだ。私が赴任した直後の2000年頃の相場は、3,000円程度であったと記憶している。

ゴルフ場名 2011 2012 2013 2014 2015
パームヒル 10,100 11,800 13,700 15,500 16,400
スダナ 8,400 8,400 8,900 9,900 11,000
カラワン(ロータスレイク) 8,700 8,700 8,900 11,000 12,400
主要ゴルフ場プレー費(円換算:ビジター、土曜日朝スタート)(1円=109Rpで算出、100円で丸め)

[出展:ジェイ・ピープルのサイトより抜粋:http://www.j-people.net

赴任した時点では手取り額として納得しても、赴任期間が長くなるにつれて実生活は厳しくなる。会社側としても、毎年のように物価上昇による赴任者の手当の増額をしなければならなくなる。

3.インドネシアでの待遇一覧

待遇一覧

現金として支給される給料とともに考慮すべきことは、インドネシアにおける待遇だ。家族帯同であっても、単身赴任であっても、気になるところだ。以下待遇について詳しく説明する。

・住宅

住宅は会社が実費を負担し、現物支給という形式が多い。通常のアパートメントの他、コンドミニアム(一軒家を数人でシェア)、サービスアパートメント(掃除、洗濯サービス付き)の形態がある。

今まではジャカルタ市内のアパートを賃貸し、郊外の会社や工場に通うというのが通常であったが、郊外のアパートに移り住む傾向がある。ジャカルタのアパートの価格が異常に上昇したことと、渋滞で通勤に2時間以上もかかってしまうからだ。

ジャカルタ周辺の日本人が安全に暮らせるアパート相場は、7万円から20万円以上と幅が広い。最近ではローカル向けのアパートに暮らしている日本人もいる。ローカル向けのアパートは3万円から8万円程度だ。ただし、シャワーが温水でなかったり、停電や断水が頻繁に起きるなどのトラブルがある。

私も1年ほどローカル向けのアパートに住んだことがある。温水シャワーのために瞬間湯沸かし器を取り付けたり、停電、断水などトラブルはアパートの管理人とインドネシア語で話して解決していった。インドネシア語が出来たので、意外と安全で快適に過ごすことができた。家賃は値切って2万4千円程度だった。

・一時帰国費用

これは会社の方針によって差がある。年1回から2回が一般的だ。帰国費用として給料に上乗せして支給する場合と現物チケットで支給する場合がある。また、直行便ではなくシンガポール経由などの格安航空券の場合もある。私の場合はこの待遇はなかったが、日本での会議のため帰国した場合、日本で1~2日程度の休暇をもらっていた。

・通勤

インドネシアの通勤は自動車だ。多くは社用車を使用し、運転手は会社専属ドランバーとして雇用している。工場長や役員、営業職については、一人一台だが、その他は数人で乗り合わせて通勤している場合が多い。出勤後は、社用に使用する。出勤も帰宅も同僚と一緒になるということだ。

・健康保険

いままで日本で加入していた国民健康保険とインドネシアの健康保険(BPJS)の2つがある。
日本の健康保険はそのまま続けることをオススメする。日本での人間ドックや歯科治療のために必要だからだ。インドネシアでは2014年に施行された健康保険(BPSJ kesehatan)には、6ヶ月以上滞在する外国人にも適応する。保険料は支給総額の5%で、4%が会社負担、1%が従業員負担だ。なお、この税率は変更する可能性が高いので、最新の情報を確認してほしい。

・海外旅行障害保険

ほとんどの赴任者は海外旅行障害保険に入っている。一番のメリットはキャシュレス・メディカル・サービスを受けられることだ。ただし、歯科医療は含まれていないので、歯の治療は日本で行っておくことをオススメする。私も一度だけ歯の治療をしたことがあるが、1回の診療で数万円以上かかり、根幹治療のため数回通っただけで、10万円を超えてしまった。

・赴任前健康診断・予防接種

労働安全衛生規則第45条に規定されている赴任前検診は、必ず行うことだ。予防接種も受けることとオススメする。インドネシアの場合には、A型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病になる。数回の注射が必要になるので、数ヶ月前から計画しておくことだ。

・社会保険

今まで日本で加入していた国民健康保険とともに、雇用保険と厚生年金保険を継続することをオススメする。なお、労災保険は海外勤務時には適応外になるが、海外派遣者特別加入制度もある。

・赴任支度金

海外赴任にともなう準備として支払われる場合が多い。相場としては20万円だ。スーツケースや衣類、トランスなどを購入する。

・赴任・帰任渡航費用

航空チケットの現物支給がほとんどだ。

・海外引越

海外の引越しにかかる費用を実費で支給するところが多い。また、赴任期間中のレンタルボックスの料金もある。
詳細は(インドネシアでの通信・宅配・引越し)を参照してほしい。

その2に続く