インドネシアにおけるエモーショナル生産性向上プロジェクト8ステップ

最低賃金の上昇以上に生産性をアップさせ、利益を確保することは、インドネシアに進出企業にとって必須だ。最低賃金は毎年15%以上も上昇しているにも関わらず、生産性はそれほど上がっていないのが現状だ。駐在9年の経験からインドネシア人の性格や感情を逆手にとった、具体的な生産性向上のステップをお伝えする。

インドネシア人は働かない、最低賃金が利益を圧迫している、生産性を上げたいがどうしたらよいかわからない、といった現地駐在員や中小企業の経営者にぜひ読んでいただき、生産性向上を目指してほしい。

1.プロジェクトを立ち上げる
2.現場をデータで把握する
3.抵抗勢力の対処方法
4.掃除を30分やる
5.手書きでグラフ化する
6.真似をする
7.悔しがらせる
8.本社を巻き込む

1.プロジェクトを立ち上げる

プロジェクト
[出典:ekonomsyariah.wordpress.com]

インドネシアの一般の従業員は指示されたことだけをするのが仕事だと感じているし、現地管理者は、自分の仕事が何かを理解していないことが多い。業務規定書があったとしても、あまりにも抽象的で、具体的に何をしたらよいのかがわからないからだ。

あなたの会社でも、現地マネージャーや管理者に聞いてみるとよい。正しく答えらることができる人は稀だ。

だから、すべての従業員が参加した生産性向上を目標としたプロジェクトを立ち上げる必要がある。
プロジェクトを立ち上げる時に、やるべきことは以下の5つ。

1. プロジェクト名を決める
2. 概略の予算を決める
3. 目標値を決める
4. 管理者に理解させる
5. 生産性の定義を決める

1. プロジェクト名

プロジェクト名はすべての改善活動のことをいい、あなたの業界用語にかぶったり、インドネシア語での意味がポジティブなものを避ければ、自由につけてよい。たとえば、5Sプロジェクト(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)、ピカピカプロジェクト(Proyek mengilap)などだ。インドネシア語で5Sにあたる”5R”プロジェクトでもいい。
*5R (Ringkas, Rapi, Resik, Rawat, Rajin)

これを社内に掲示して、すべての活動がこのプロジェクトのもとで行うことが理解できればいいので、できるだけ短く一言で言える方がよい。

2. 概略の予算

何に、どのくらい使えるかは会社の業績や、規模によって変わるが、ある程度使える範囲を決めておく。最初は少なくてもよいだろう。
最低限必要なものは、ホワイトボードや発表用の模造紙、掃除用ブラシやバケツなどだ。

3. 目標値を決める

生産性向上を目指すが、最悪でも最低賃金の上昇率より上まわなければならない。2005年から2015年のブカシ県における最低賃金の平均上昇率は約15%だ。ブカシ県では、年間15%以上の生産性向上を目指すことだ。地域や業種によって最低賃金の上昇率が変わるので、調べてほしい。

4.管理者に理解させる

管理者に理解させることは、「なぜ生産性向上が必要なのか?」ということだ。最低賃金は毎年上昇しているので、特別に仕事をしなくても、給料は15%は確実に上がるからだ。

年度別最低賃金2005年〜2025年(予想)
[年度別最低賃金2005年~2025年(予想)]

このグラフは2005年からブカシ県の最低賃金と日本の最低賃金をルピア換算したグラフだ。
2005年から2015年までの最低賃金の上昇の平均は15.118%だ。この比率で2025年までを予想すると、Rp11,607,821 [107,162円]となる。現在の約4倍になる。計算上は4倍だが、そこまでは上がるかどうかはわからない。

しかし、単純に生産性としては、5年で2倍になり、10年で4倍にならないと、利益を確保できなくなるのはすぐにわかるだろう。この事実を現地マネージャーに理解してもらわなければならないのだ。あなたの会社の地域・業種によって最低賃金が違うので、このグラフを現地マネージャーに作ってもらうことだ。

そして、会社の利益を確保するためには、この最低賃金アップ以上に効率的に仕事をしなければ、マネージャーや管理者としての役割を果たしていないということになる。だから、あなたの給料は上がらない、ということをはっきり理解してもらうのだ。

さらに管理者に伝えることは、
「もし、あなたが自分でビジネスを始めたとしても最低賃金の上昇は避けられない。今から”将来の訓練のため”に生産性の向上を目指してほしい」ということだ。
管理者は「会社のため」ではなく、「自分の将来のため」に活動するマインドに変わるからだ。

5.生産性の定義を決める

生産性向上といっても、「具体的に何がどうなればよいか」ということだ。日本人赴任者でもしっかり理解している人は少ない。日本からの赴任者や現地マネージャー、管理者も含めて、「生産性」という言葉の定義をしっかり決めておくことだ。

まずスタート時の「生産性」の定義は以下のようなものだ。

”生産性の定義:
従業員一人で、一時間あたりに生産する出来高をいう”

例えば、10人で、5時間かかって、100個作っていたとしたら、生産性は
100個/10人×5時間 = 2.00

つまり、一人で、一時間で、2個生産できる、ということだ。

生産性を向上するということは、3つのことがある。

①生産数量を上げる
②人数を減らす
③時間を減らす

3つパラメータで評価することになる。

2015年以降の5年間で、生産性を2倍にする計画の場合には以下のようになる。

時間 生産数 生産性 一人1時間あたりの出来高
生産数量を増やす 2015 10 5 100.00 1.00 2.0000
2016 10 5 115.00 1.15 2.3000
2017 10 5 132.25 1.32 2.6450
2018 10 5 152.09 1.52 3.0418
2019 10 5 174.90 1.75 3.4980
2020 10 5 201.14 2.01 4.0227
人数を減らす 2015 10 5 100 1.00 2.0000
2016 9 5 100 1.11 2.2222
2017 8 5 100 1.25 2.5000
2018 7 5 100 1.43 2.8571
2019 6 5 100 1.67 3.3333
2020 5 5 100 2.00 4.0000
時間を減らす 2015 10 5.00 100.00 1 2.0000
2016 10 4.35 100.00 1.15 2.3000
2017 10 3.78 100.00 1.32 2.6450
2018 10 3.29 100.00 1.52 3.0418
2019 10 2.86 100.00 1.75 3.4980
2020 10 2.49 100.00 2.01 4.0227
[生産性向上計画例]

実際には、材料費、設備費、光熱費、管理費、季節要因などもあるが、最初は単純にしておく。計算を単純にしておかないと、現地人が理解できなくなるからだ。インドネシア人従業員にとっては、これだけでも「理解が難しい」レベルになる。

サービス部門では、出来高を売り上げにすればよい。同じ人員で、売り上げを上げるか、同じ売り上げならば、人数を減らす。売り上げが上がったからといって、従業員を安易に増やすことはできないという意識を持つことができるからだ。

このプロジェクトは従業員を全員参加させ、社運をかけた戦略なので、末端の従業員にも理解してもらわなければならないからだ。

2. 現場をデータで把握する

現場のデータ
[出典:ekonomsyariah.wordpress.com]

データを現場で計測することが基本だが、データを取るのはそれほど簡単ではない。

どんな仕事であっても、複雑に絡み合っているからだ。例えば、組み立てをする工場であれば、受注を受ける営業、部品や材料を購入する購買、生産を指示する生産管理、ものづくりのする製造、製造をサポートする生産技術、検査をする品質管理、出荷、梱包をする部門などがある。さらに、会社全体として経理、総務、人事などがある。

ものづくりの基本的な流れ
[ものづくりの基本的な流れ]

まず最初に始めるのは、出荷を担当する部門だ。
売り上げに対するのキーポイントであり、ものづくりの最終的な結果だからだ。

出荷担当部門におけるデータは以下。
A. 本日の出荷予定の品目と数量
B. 実際に出荷完了した品目と数量
C. 直接出荷に関係する人員
D. 直接出荷に関係する人員の総残業時間(時間)

すると、一人、1分で出荷で何個出荷できたか、と達成率がわかる。

計算式は
・生産性=B/(C×8hour+残業)
・達成率=B/A

生産性計算式
[生産性計算式の図]

同じものづくりの会社であっても、異なってくるので、自社でアレンジしてほしい。基本のとなるのは、一人、一時間でどのくらいの製品が次の工程に進ませることができたか、ということになる。もちろん品質を落としてはいけない。会社によっては、製品別、ライン別、などに分割してもいい。

データを取るときに注意すべきことは、自分の部門ではどうしようもないことがたくさんあることだ。データを取り始めると、たくさんの言い訳をしてくる。言い訳は、「わたしの責任ではない」ということだ。

例えば、出荷部門の場合に、製造部や品質チェックが終わっていないと製品を出荷できないからだ。

「予定通りに出荷できなかったのは、わたしのせいではない。製造部が悪い」という言い訳だ。それでも、データとしては、予定出荷数、実際の出荷数のデータを取るのだ。

日本人は、現地管理者とともに「なぜ出荷予定のものが作られなかったのか?」を調べていくことになる。原因は意外なところに存在していることがわかってくる。例えば、

・もともとの出荷計画がまちがっている
・生産計画が変更されたが、出荷部門まで連絡がきていない
・検査で判断待ちとなっている
・製造部に部品が届いていない
・設備トラブルで、ラインが数時間も止まった
など、問題が噴出してくるのだ。

つまり、”現場で、今のデータを取る”ということは、問題を”見える化”させることになるのだ。

すると今まで出荷担当部門は、ただ完成品が来るまで待っていたのが、製造部に煽りにいくか、管理者に計画を変更してもらうか、人員を減らす、といった行動をせざるを得なくなる。そうしないと、自分の評価が下がり、給料が上がらないからだ。

3. 抵抗勢力の対処方法

抵抗勢力
[出典:KOMPAS.COM]

インドネシアで生産性向上を目指したプロジェクトを始めようとした時、最初に直面するのは抵抗勢力だ。インドネシアに進出した企業の中で、生産性を向上させたいと心の底から思っているのは、日本の本社にいる経営トップだけだからだ。

インドネシアに赴任している日本人も反発をする、ということだ。

ましてや、現地のマネージャーも、管理者も、作業員も、だれもやりたくない。まず「だれもやりたくない」ということを受け入れることから始めることだ。なぜ、抵抗するのかを順番にお話ししよう。

1. 日本人赴任者の抵抗

対処方法:日本にいる経営者は、赴任者の話をじっくりと聞く

赴任した当初は、やる気もあるし、意気込みを持ってインドネシア赴任命令を受け入れる。しかし、その情熱はアッと言う間に消えて無くなってしまう。インドネシア人があまりにも仕事をしないからだ。

遅刻、責任のがれ、義務を果たさず権利だけを主張、会社にいるだけで給料が上がる。これらのギャップが目の前大きな壁が立ちはだかり、自分の仕事量だけが増えていくことになるからだ。

「生産性を上げるだって、現状維持さえも難しいのに・・・」「また自分の仕事が増えるのか・・・」ということしか、赴任者は頭に浮かばないのだ。結果、週末のゴルフやカラオケガールにストレス発散をして、赴任期間を「大過なく過ごす」ことが目的になってしまう。大企業のように、海外の経験を積み、日本に帰ったらある程度の役職が待っている、ということも期待できないからだ。

実は、私も同じ気持ちを抱えていた時期があった。

反発を続ける赴任者に対しては、日本の経営者トップが赴任者の実情をよく聞き、トップの命令として行うことだ。そして、日本側からも協力するということを約束する。駐在員の給与はなかなか上げられないが、”協力をする”というだけでも、抵抗感が少なくなる。

日本にいる経営者は、「高いカネをだして赴任させているのだから、インドネシアはインドネシアでなんとかしろ」という気持ちでは、生産性が上がらない。

2. 現地マネージャーの抵抗

対処方法:ボーナスで差をつける

現地マネジャーや管理者を、生産性向上に積極的に参加させるには、カネしかない。先ほどの最低賃金のグラフを作らせることによって、ある程度の意識はできるが、それだけでは不十分だ。マネージャーや管理者は、常にスパイラルアップの転職を狙っている。少しでも給料の良いことろがあれば、すぐに移ってしまう。

断言するが、マネージャークラスが、会社に忠誠心や終身雇用を求めることは絶対にない。チャンスがたくさんあり、2桁成長を続けるインドネシアでは、優秀な人材を確保したいと思っている大きな会社は、給料の金額を惜しまないからだ。感覚としては、3〜4年サイクルで、転職することが多い。

彼らのやる気を出すには、給料やボーナスで差をつけることしかない。そして、「もし自分でビジネスを始めたとしても、この会社で訓練した生産性向上の手法を生かしてほしい」ということを伝えるのだ。

そんなことを言ったら、すぐ退職してしまうかもしれないと不安に思うが、自立するだけの能力がある人材はすでに独立して自分でビジネスを始めている。それに、「訓練 ( Latihan )」という言葉は、将来につながると感じるので有効的だ。

現地マネージャーや管理者が抵抗するもう一つの大きなことは、「作業員から文句を言われる」ということだ。
マネージャーや管理者であっても、人間だ。部下から文句を言われたくないし、自分の仕事が増えるようなことはしたくない。

生産性が上がっていくと、管理者も作業者も、いままでゆっくりとした仕事をしていたのが、時間に追われることになるからだ。同じ給料をもらっているならば、ゆったりとのんびりしたいという感情だからだ。だが、ボーナスなどのお金が増えるとなると、突然やる気が出てくくるのだ。

3. 作業員の抵抗

対処方法
①「仕事が無くなっても退職させられることはない」と約束する
②「ご褒美がもらえる」とエサをみせる

生産性の向上は、生産数量を上げるか、短い時間でできるか、人員を減らすか、という3つの項目がある。作業員の不安は「生産性が上がると、自分が必要なくなって、退職させられるかもしれない」ということだ。

一般の作業員にとって、日系の会社に勤めるということは、安定した給料がもらえ、家族が病気になっても治療費の負担が軽減されることが、一番の利益になる。だから、自分と家族の生活を守るために、退職させられるような活動をしたくないのだ。

作業員には「生産性が向上しても、従業員を減らしたり、退職させるということはない」とはっきり宣言し、約束することだ。人員が削減できた分だけ、新しい仕事があるし、いろいろなスキルも身につけることができる、ということを説明していくことだ。

生産性向上プロジェクトには、ご褒美があること伝える。具体的には、表彰される、評価が上がり給料が上がる、日本人と食事ができる、日本の研修に参加できる。などだ。作業員には、そういった「エサ」がどうしても必要だ。

4.掃除を30分やる

30分の掃除
[出典:www.terrazzo-restoration.com]

品質を下げずに生産性向上をするには、どうしても避けられないことは、3Sとよばれる整理・整頓・清掃だ。なかでも、最初におこなうのは社員全員参加の掃除だ。

就業時間内に、日本人赴任者、マネージャー、現地管理者、現場の作業員も全員で、30分間掃除をする。計画された新聞1枚ぐらいの狭い範囲を、徹底的に磨く。その時のルールは「おしゃべりをしながら」やることだ。

赴任者と管理者、マネージャーも掃除に参加して、従業員とおしゃべりしながら、家族のこと、待遇のこと、やりにくいことなどを話していく。すると、作業者の健康状態、家族の状態、会社への不満が理解できるようになるからだ。

そして、掃除に参加した人は、スタンプカードに捺印をして、50個や100個になったら、ご褒美がもらえるようにする。すると、スタンプを押してもらいたいために、遅刻や突然休む人が激減していく。

詳しくは「掃除をさせる仕組み」を見てほしい。

掃除をすることによって、もう一つの試練がある。
それは、「掃除なんかしたくない」というマネージャーや管理者が、会社を辞めていくことだ。

インドネシアにおいては、掃除は中学卒業以下の低学歴の人がやる仕事で、高校卒業以上の人がやる仕事ではない、という認識だ。「どうしても掃除なんかしたくない」「大卒の私が掃除をするという”卑劣な扱い”には耐えられない」という管理者もいる。

日本ではそういった人はほとんどいないし、ものづくりの現場を経験した人であれば、掃除がいかに大切かを理解している。

しかし、学歴第一主義のインドネシアでは通用しない。それは、学校でも掃除をするのは、用務員のおじさんだし、家でもお手伝いさんが掃除をするのからだ。「掃除をしている=学歴がない」ので、掃除をしているところを見られたくないし、屈辱的に感じるのだ。

生産性向上を目指すには、掃除は絶対に外せない。掃除をしない管理者は去っていったほうが、むしろ今後の会社のためにもよいのだ。

5. 手書きでグラフ化する

グラフ化する
[出典:ieeesb.ft.ugm.ac.id]

生産性のデータなどは、一覧表にして、グラフ化し、すべての従業員が見れるようにしておくことだ。多くのインドネシア人は計算が苦手で、なんでもパソコンでやろうとするからだ。パソコンで、データを保存しておくのはよいが、アプトプットである結果は、手書きで書き込むことだ。

ラインごとの生産管理板や生産性の数字、出勤表、部署ごとの改善結果も、ホワイトボードや模造紙に書いて張り出す。私がオススメしている、カルト・テレマカシ(ありがとうカード)や、個人ごとのスタンプカードの数も公表する。

カルト・テレマカシやスタンプカードについては、「インドネシア従業員に整理・整頓・清潔の文化を定着させる9ステップ」を見てほしい。

全従業員が見れるようにすることは、不満も解消することになる。

インドネシアでは、一般の人にとっても収賄が当たり前になっている。データがパソコンの中にあって、すべての従業員が見ることができない場合には、「なにか収賄行為があるのでは?」と不信感が大きくなっていく。カルト・テレマカシやスタンプカードは、従業員の給与に直結しているので、自分の評価がどうなっているのかは、多くの人が見れる状態にすることによって、モチベーションを維持できるのだ。

生産性のデータを計算する場合には、必ずシンプルな計算にすることだ。シンプルとは、従業員が頑張れば、頑張った分だけ数字が上がるようにしなければならない。

日本においての生産性や改善の計算では、売り上げや効果金額を使用している。企業としては、金額という数字は大事だ。しかし、インドネシア従業員にとっては、金額数字はあまりにも大きく国家予算の話のようで、身近に感じることはできないので、モチベーションにはつながらないからだ。

ただ、経営者側に近い現地マネージャーには、経理についての教育し、経営数字の理解をさせる必要がある。それ以下の従業員は、自分の給与がどのくらいになるのかだけに興味があり、会社全体の数字の金額には興味がないからだ。生産性のデータについては、実際に目で見ることができる個数や、一時間あたりに生産できる数で表す必要があるのだ。

6. 真似をする

真似をする
[出典:www.anneahira.com]

生産性向上のアイディアについては、真似をするをことを勧める。他の部署、他の会社からでもいい。成果の出ていることを真似して、自分の成果を上げることだ。「真似することは良いことだ」と示すことによって、従業員たちはいつも良いアイディアがないかと探し続けるからだ。

例えば、マクドナルドでは出来上がったハンバーガーは斜めの傾斜を使い、調理場から置くと”自動的に”カウンターの方にすべり落ちてくる。”先入れー先出し”の原則を、動力を使わずにやる方法の一つだ。これを真似すると部品を置いたら、傾斜にそって落ちてきて次の工程に届く仕組みが作れる。

現地人に説明するには、こういった具体例をあげて説明すると理解が早いし、普段の生活の中から、アイディアを探そうという気持ちになるのだ。

生産性向上のプロジェクトを開始し、データを取り、掃除をして、真似をし始める。2週間程度経つとあるラインや部署で成果が出始める。成果がでた仕組みを、他のラインが真似をすることだ。

大いに真似をすることは良い事として、真似して成果が出たラインも評価上げていくのだ。真似することによって、自然に水平展開が可能となってくる。

さらに、他の部署から真似した場合には、元のアイディアを出した部署や人に「カルト・テレマカシ」を渡す。

カルト・テレマカシとは、「ありがとうカード」で、「よいアイディアを教えてくれてありがとう」という感謝の気持ちを伝える手段だ。改善でも、アイディアでも、ちょっとした手伝いでもなんでもよいから、感謝を伝えるツールとして使う。

テレマカシ・カードをたくさんもらった人も、評価が高くなり、昇級や昇進ができることになるのだ。だから、新しいアイディアを出した人も、真似をした人も、利益を得ることになっていくのだ。

生産性向上のプロジェクトを開始し、データを取り、掃除をして、真似をし始める。すると2週間程度経つと、成果と共に問題点が噴出してくる。例えば、

・データの取り方がおかしい(自分のところが低い)
・自分のラインの生産性が上がらないのは、ほかの部署のせいだ
・◯◯さんは他のラインをえこひいきしている
・私の上司である管理者は何もしてくれない
・イレギュラーな作業ばかりなので、生産性なんかあげられない
・すごく疲れる
などだ。

それらの問題を解決するために赴任者が現地マネージャーとともに調整をしていく。

7.悔しがらせる

悔しがらせる
[出典:sbelen.wordpress.com]

悔しがらせるために3つの戦略がある。
1. 表彰する
2. うそのデータは評価を剥奪
3. 生産性が悪くなっても発表させる

1. 表彰する

成果がでたラインや部署に対して、表彰をすることだ。できるだけ頻繁に表彰する。週間MVPでもいいし、月間優秀ラインでもいい。インドネシア人は、多くの人の前で表彰されることは、この上ない喜びを感じてもらえるのだ。

これは、受賞できなかった人を悔しがらせることになる。悔しがらせることによって、他のラインも真剣に生産性向上の取り組んでいくからだ。表彰は結果に対してするが、本当の狙いは「受賞できなかった人を悔しがらせる」ためにおこなうのだ。

だから、受賞者には「えこひいき」をする。ラインの全員にチョコレートをあげたり、日本人と食事会をしたり、年間の優秀ラインにはテレビやバイクなどの高額商品をプレゼントする。

すべて、悔しがらせることが目的だ。掃除を含め、生産性向上は真似するだけなので、誰でもできるし、頑張った人には評価も、給料も上がっていくからだ。会社の評価は、実績で評価され、学歴は関係ないのことを強調するためでもある。

反対に、学歴があっても管理能力がない人は、部下である従業員から低い評価を受けることになる。

2. うそのデータは評価を剥奪

うそのデータが発覚したときにも、悔しがらせることがある。うそのデータを出してきた場合には、どれほど成果があったとしても評価しないと決めておくことだ。

うそのデータを出したからといって、感情的に怒ることは決してしないことだ。うそのデータかどうかを慎重に調査し、グループから話を聞き、確認する。罪を認めたならば、もちろん評価を剥奪する。

さらに、内密にせず「なぜ、うそのデータを出したのか」「どうやったらバレないように工夫したのか」をみんなの前で発表させることだ。発表者は悔しい思いをするが、聞いている従業員はものすごく面白く感じる。いわゆる「他人の不幸は蜜の味」なのだ。

ただ、従業員の前で発表をした、という勇気については評価することだ。

3. 生産性が悪くなっても発表させる

成功事例も発表するが、失敗事例も発表することだ。思い違いや”改善”のつもりが”改悪”になってしまうことも多い。それらの失敗を多くの従業員にシェアすることにより、同じ間違いをする確率は確実に下がっていくのだ。

そして、失敗を恐れない気持ちを持ってもらうこと。現状維持は、衰退していることと同じだからだ。

生産性向上などの発表の機会をたくさん作っていくことだ。もう一つの狙いは、プレゼンテーションスキルの向上だ。実際にやってみるとわかるが、一般の作業員の中にも、理論的な考えとプレゼン能力が高い人がいる。赴任者は発表をみながら、社内の人材を見つけていくことだ。

改善のトレーナーに抜擢したり、営業活動に参加させたりすることもできる。発表会は「社内の優秀な人材発掘場所」という意識を持つだけで、発表会も価値のあるものになるのだ。

8. 本社を巻き込む

本社を巻き込む
[出典:www.backpackerindonesia.com]

生産性向上のプロジェクトには、必ず日本の本社を巻き込んでおこなうことだ。

日本の本社からは、「作業を低賃金でやらせるところ」「指示したことをやっていれば良い」「生産が予定通りにいって当たり前」と思われている。赴任者はこういったことを受け入れた上で、生産性向上のプロジェクトを始めなければならない。

つまり、日本の本社は”指揮をする”ことが仕事で、”言われたことをやる”のがインドネシアというスタンスだ。

しかし、生産向上プロジェクトを始め、半年ぐらい経つと必ず成果が出てくる。手先が器用で、辛抱強いインドネシア人の性格と、同じ作業を毎日続けていると、その作業だけに限っては、日本人よりマスターしてることが多い。

日本側よりも、なんらか上回っていると感じたら、日本の本社の担当者を呼び、みてもらうことだ。

「アドバイスが欲しいから指導してくれないか」と社長や管理職クラスを呼ぶ。発表会を一緒にみてもらったり、壁に貼ってあるカルト・テレマカシやスタンプカード、ラインごとの生産性のグラフなどを説明する。

レベルが低くても良いが、「生産性向上の活動をしている」という事実をわかってもらうためだ。すると、本社から「お互いに交流し合おう」という提案が必ず発生する。日本人がインドネシアに行ったり、インドネシアから日本に見学に行くといったようなことだ。

インドネシアから日本に行くことが続くと、インドネシア人従業員は、「もしかしたら日本に行けるかもしれない」と感じて、さらに生産性向上の活動に熱心に取り組むようになる。今まで赴任者しか知らなかったが、多くの日本人知ることができ、日系の会社に勤めていることの喜びを感じるようになるのだ。

日本側にも、「インドネシアに負けていられない」という意識が働き、国内の改善活動も進んでいくのだ。

まとめ

最低賃金の上昇は毎年15%も上昇している。しかし、生産性がそれほど上がっていないばかりか、下がっている企業もある。利益確保のために生産性を上げたいが、なんども失敗しているのは、インドネシア人特有の性格や感情を理解していないからだ。まずは、現地人の性格、感情を受け入れることから始まる。

そして、感情を動かすための”仕組み”をつくることによって、生産性を上げることができるのだ。
カルト・テレマカシ、スタンプカードもその一つで、すべてが評価や給料と結びついている。

これらの総合的な取り組みが、従業員のやる気を引き出し、生産性向上へと繋げっていくことになるのだ。

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